母国で好対照なクルピとオリヴェイラ
Jリーグで確かな実績を残した2人の今

アトレチコ・ミネイロでロナウジーニョを解雇

C大阪を退任後、母国でアトレチコ・ミネイロの指揮を執ったクルピ
C大阪を退任後、母国でアトレチコ・ミネイロの指揮を執ったクルピ【写真:アフロスポーツ】

 一方、C大阪の監督時代に単身赴任していた時期が長かったクルピは、今年は家族と水入らずの生活を楽しむつもりだった。しかし4月末、成績不振で監督を解任したアトレチコ・ミネイロから強い要請を受け、急遽、現場へ戻った。チームの中心選手は、元ブラジル代表のスーパースター、ロナウジーニョと今年のW杯に出場したCFジョーである。


 第9節終了時点で、順位こそ8位だったが、勝ち点はオリヴェイラ率いるサントスと同じ。W杯後に巻き返しを図ったが、攻撃の中心を担うべきロナウジーニョが不調と見るや、容赦なく途中交代を命じた。本人が不満をあらわにしても、厳しい態度を変えない。結局7月末、ロナウジーニョはクラブを退団した(その後、メキシコリーグのケレタロに入団)。


 事実上、ロナウジーニョを解雇したクルピに対し、地元メディア、サポーター、さらにはクラブ首脳から強い批判が起きた。成績もなかなか上がらず、オリヴェイラがサントスを解任された時点の全国リーグの順位は8位で、サントスを勝ち点4上回っていたにすぎなかった。


 しかしその後、アトレチコ・ミネイロは著しい変貌を遂げる。クルピが、ロナウジーニョが抜けた穴を中堅選手やクラブ育ちの若手選手で埋め、なおかつチームの結束力を劇的に高めたのである。

サポーターにとって神様のような存在へ

ロナウジーニョらの抜けた穴をチーム力で埋めたクルピ。サポーターにとって神様のような存在になっている
ロナウジーニョらの抜けた穴をチーム力で埋めたクルピ。サポーターにとって神様のような存在になっている【Getty Images】

 コパ・ド・ブラジルの準々決勝で、コリンチャンスに第1レグ(アウェー)で0−2と敗れ、しかも第2レグの開始早々に失点して絶体絶命のピンチに追い込まれた。しかし、そこから3点を奪い、試合終了直前に4点目を入れて奇跡的に勝ち上がる。さらに、準決勝でフラメンゴと対戦すると、第1レグ(アウェー)でまたしても0−2の敗戦。さらに、第2レグで再び先制を許して崖っぷちに追い詰められたが、その後、サポーターの「俺たちは(勝ち上がりを)信じている」の大合唱に応え、またしても4点をねじ込んで決勝へ。さすがのクルピも、「信じられない」と声を詰まらせていた。そして、11月12日に行われたクルゼイロとの決勝の第1レグ(ホーム)で、2−0と快勝。第2レグは26日に行なわれるが、96年に続いて自身2度目の栄冠を目前にしている。


 全国リーグでも、健闘している。コパ・ド・ブラジルを並行して戦っているため過密日程となり、選手のローテーションを強いられる。加えて、チームの規律を破ったジョーら3選手をチームから追放して選手層が薄くなったにもかかわらず、この原稿を書いている20日時点で4位につけている。


 現在、クルピはアトレチコ・ミネイロのサポーターにとって神様のような存在だ。試合前、ピッチに姿を現わすと、観衆が総立ちで「レヴィー」コールを繰り返す。クラブが本拠を置くベロオリゾンテでは、町を歩いているとたちまち群集に取り囲まれ、身動きできなくなる。

信念を貫く姿勢が、チームに強い求心力をもたらす

香川(左)を攻撃的MFで起用したように、クルピは選手の資質と適性を見抜く能力がずば抜けている
香川(左)を攻撃的MFで起用したように、クルピは選手の資質と適性を見抜く能力がずば抜けている【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 07年、当時C大阪の控えのボランチだった18歳の香川を攻撃的MFにコンバートし、我慢強く起用して才能を開花させたことからも分かるように、選手の資質と適性を見抜く能力がずば抜けている。しかも適宜、選手に有益なアドバイスを与えて成長を助けることができる。


 また、C大阪時代も乾、柿谷らが間違った振る舞いをすると厳しく注意したが、それは相手がロナウジーニョやジョーであっても全く変わらない。常にチームの最大利益を追求し、いかなる状況にあっても自らの信念を貫く姿勢が、チームに強い求心力をもたらしている。


 61歳のクルピと63歳のオリヴェイラが、いずれも優秀な監督であることに疑いはない。しかし、少なくとも今シーズンに限っては、チーム作り、選手起用、モチベーターとしての手腕、危機管理能力などの点でクルピが優っていたと言っていいだろう。

沢田啓明

1955年山口県生まれ。上智大学外国語学部仏語学科卒。3年間の会社勤めの後、サハラ砂漠の天然ガス・パイプライン敷設現場で仏語通訳に従事。その資金で1986年W杯メキシコ大会を現地観戦し、人生観が変わる。「日々、フットボールを呼吸し、咀嚼したい」と考え、同年末、ブラジル・サンパウロへ。フットボール・ジャーナリストとして日本の専門誌、新聞などへ寄稿。著書に「マラカナンの悲劇」(新潮社)、「情熱のブラジルサッカー」(平凡社新書)などがある。

スポナビDo

イベント・大会一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント