パンドラに見るマツクニGI馬の雰囲気=エリザベス女王杯で吹くか“二冠”の風

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ネコ科の動物のような、しなやかな動き

高野調教師はショウナンパンドラを「ネコ科の動物のよう」と話す 【netkeiba.com】

 春のクラシック路線を歩むことは出来なかったけれど、残り少ないチャンスを活かして秋華賞への切符を掴んだ。ここから、新馬戦からフラワーCまで手綱を取っていた浜中俊騎手とのコンビが復活。1週前追い切りに騎乗した浜中騎手は、春からのパワーアップを感じていた。体はもちろんのこと、メンタル面の成長も大きかったという。紫苑Sで激走した後も食欲が落ちることはなく、秋華賞へ向けて考えていた通りの調教を消化し、最高の状態で秋華賞へ出走した。

「装鞍所やパドックでの歩きを見て、贔屓目もあると思いますけど、本当にいい歩きをするなと思いました。この馬はデビュー前からそうなんですけど、関節や股関節の可動域が大きいんです。例えるならネコ科の動物のような、しなやかでいて力強い動きをしますね」

 これがショウナンパンドラの、2つ目の才能ではないだろうか。関節の可動域が大きいため、体全体を使ってバネが弾むように前に進んで行く。馬体重以上にその体を大きく見せるのは、この天性のしなやかさによるものだろう。ショウナンパンドラは初のGI参戦にも関わらず、パドックでは堂々と歩き、返し馬でも落ち着きを見せていた。ファンファーレと共に大歓声が起こっても、冷静さを失うことはなかった。

「とにかく、ゲートだけは出てくれと思っていました。ジョッキーに細かい指示はしていないですけど、素晴らしい好スタートを切ってくれて、まずホッとしましたね。うちのもう1頭(ハピネスダンサー)も含めてけっこう先行馬がいて、ハイペースになって。でもショウナンパンドラはちょうどいいスポットに入れて、『これはいいぞ』と、わくわくしながら見ていました」

「そこ行くんかい!」

 ショウナンパンドラの後ろには、1番人気のヌーヴォレコルトがつけていた。勝負所の3、4コーナーで、浜中騎手は内を選択。ハイペースで引っ張った先行馬たちがひしめく内を選択するのは、一つの賭けでもあっただろう。

「正直、『そこ行くんかい!』と思いました(笑)。今まで外からマクるレースが多かったですし、リスクがある中で腹を括ってくれたなと。でも、一度も詰まることなく、加速しながらスーッと行けました。ジョッキー目線で行くと、パーッと前が広がっていい道が見えたんじゃないですかね。直線に入った所で前が壁になりそうだったけど、そこもスルリと抜けてくれて。ここでいい勝負になるなと思いましたけど、外からも来ていましたし、ゴールするまで確信はなかったです」

 ヌーヴォレコルトが鋭く迫る中、ショウナンパンドラはクビ差粘って勝利を掴んだ。ショウナンパンドラにとっても、高野友和厩舎にとっても、初めての重賞制覇がGI制覇となったのだ。しかし――この快挙に浸る間もなく、次なる戦い、エリザベス女王杯へ向けての調整が始まった。

調教師になってからは気持ちの持ち方が変わった

オーナーが喜んでくれたという満足感が大きかった 【netkeiba.com】

 開業から4年目で、初重賞制覇初GI制覇という快挙を成し遂げた高野調教師。喜びを爆発させてもおかしくないその場面で、冷静さを保ち続けていたのが印象的だった。

「もちろんすごく嬉しかったですけど、調教師になってからは気持ちの持ち方が変わったんだと思います。松田国英厩舎で持ち乗り助手をやっていた頃は、みんながみんなの馬を見るというシステムだったので、他の人の担当馬でも、声を出して応援していました。ダイワスカーレットの桜花賞の時は、一番叫んだと思います(笑)。自分が担当していたモンテクリスエスが重賞(ダイヤモンドS)を勝った時には、ゲートから戻って来るバスの中で大はしゃぎしましたから。でも調教師になって、立場が変わりましたし、自然にどのレースも客観的に、冷静に見られるようになったと思います。もちろん助手時代も馬主さんの馬ですけど、今は馬主さんからの大切な預かりものというイメージが強いです」

 今回の秋華賞には、ショウナンパンドラと共にハピネスダンサーも出走していた。ショウナンパンドラ勝利後も、調教師として2頭を見守る責任がその表情に表れていたのだろう。

「僕らは技術料を買ってもらって、馬を預けてもらっているわけですから、馬のため、馬主さんのためにという気持ちです。直線はパンドラが抜けて来たのはもちろん見えていましたけど、もう1頭の方が下がっていっていたので、『ああ、下がっちゃったな』と。ハピネスダンサーは何着だったか、確認してから検量に下りて行きました。GIを勝たせてもらいましたけど、自分の手柄という思いは一つもなかったです。GIを勝っておかしくない血統ですし、そういう馬を預けてくれたオーナーの期待に応えられたという、オーナーがとても喜んでくれたという満足感が大きかったですね」

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