王者・内村航平が越えた「25歳のヤマ」 次代のオールラウンダーを牽引

矢内由美子

オールラウンダーたちの成長

世界選手権で個人総合銅メダルを獲得した田中佑典も安定した演技でコナミの連覇に貢献 【写真:伊藤真吾/アフロスポーツ】

 今大会では内村に引っ張られるように、後続のオールラウンダーたちの成長も目覚ましかった。10月の世界選手権で個人総合銅メダルに輝いた田中佑典(コナミ)は、出場した4種目すべて15点台を出す安定ぶりでチームの連覇に大きく貢献した。
「大きな大会(世界選手権)が終わった後だが、モチベーションを保ったままこの大会に臨んだ。妥協せず、準備ができたんじゃないかなと思う」と胸を張る田中には、内村も「代表の合宿で僕に“ついてきてくれている感”があった」と頼もしそうな視線を送る。

 学生勢の底上げも目立った。世界選手権で個人総合決勝の2枠目を田中にさらわれる悔しさを味わった加藤凌平(順天堂大3年)は、全6種目に出場して合計90.050をマーク。チームを2位に導いた。
「団体優勝を目指していたのでコナミに負けたことが悔しい」と唇を噛(か)みしめながらも、団体決勝というミスの許されない状況での高得点には「終わってみれば個人としてはまた一歩成長できたように感じている」とさらなる前進の手応えをつかんだ様子だ。

全6種目に出場して合計90.050をマークしチームを準優勝に導いた加藤凌平 【写真:伊藤真吾/アフロスポーツ】

 加藤と並ぶ順天堂大のダブルエース、野々村笙吾(3年)は4種目めの平行棒の際に鎖骨周りの筋肉を痛めたことで、予定していた6種目中、鉄棒とゆかを棄権。負傷は気がかりだが、今季全般を振り返れば「今年はやっと世界選手権の代表になって、世界でも自分の演技をすることができた」と手応えを口にした。「個人総合の2番手グループ3人(田中、加藤、野々村)は実力的には変わらないと思う。来年はもっと実力をつけて、勝ちにこだわっていきたい」と意欲をさらに高めている。

 3位になった日本体育大も、次代のオールラウンダーたちが存在感をアピールした。アジア大会個人総合金メダルの神本雄也(2年)は3種目に出場。最も得意とする平行棒ではDスコア6.9という世界トップクラスの構成で臨み、高得点を狙った。ミスが出たのは痛かったが、本来はミスの少なさを特長とする選手。「来年は苦手種目を克服し、技も増やしていきたい」と前を見つめる。

 日本体育大の畠田好章監督が「体操センスは神本以上かも」と評する岡準平(3年)はチーム最多の4種目に出場し、落下したあん馬以外でレベルの高い演技を見せた。鯖江高校2年のインターハイで個人総合と団体を制した逸材は、加藤や野々村と同学年。大学1年のときに痛めた腰のケガが回復し、「来年は6種目のDスコア39.1を目指している」と意気軒昂(けんこう)。このスコアは世界レベルだ。

 今回は出場していないが、高校3年の白井健三(神奈川・岸根高)もインターハイなどで個人総合の力をつけていることを示している。リオ五輪、そして東京五輪へ。内村が牽引し、2番手グループ、3番手グループが質量ともにレベルアップしている体操ニッポンがここにある。

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著者プロフィール

北海道生まれ。北海道大卒業後にスポーツニッポン新聞社に入社し、五輪、サッカーなどを担当。06年に退社し、以後フリーランスとして活動。Jリーグ浦和レッズオフィシャルメディア『REDS TOMORROW』編集長を務める。近著に『ザック・ジャパンの流儀』(学研新書)

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