慶応大を強くする「戦術の使い分け」 ラグビー界の古豪が進化
強豪の筑波大にも快勝し、充実の4連勝
4連勝と好調な慶応大。戦術を組み合わせて多彩な攻撃を見せている 【斉藤健仁】
中でも昨季の大学選手権ベスト4の慶応大は、春季大会は帝京大、早稲田大、大東文化大に敗戦し1勝4敗の5位、夏も帝京大や法政大に敗れるなど、調子は良くなかった。それでも、9月に対抗戦が開幕すると「春から積み上げてきたものがある」(和田康二監督)という慶応大はボールを広く動かしつつトライを重ねて、明治学院大、青学大、筑波大、立教大を連破、充実ぶりをうかがわせた。
もちろん昨季から和田監督がこだわる早く前に出るディフェンスと、S&C(ストレングス&コンディショニング)の成果も出たとも言える。
栗原徹氏らの助言で取り入れた新戦術
積極的に新戦術を導入している就任2年目の和田監督 【斉藤健仁】
トップリーグではパナソニック、NEC、神戸製鋼、ヤマハ発動機、今季から栗原氏がコーチを務め、初のトップ8入りを決めたNTTコミュニケーションズや近鉄、大学では3年ほど前から同志社大、昨季の早稲田大、今季からは慶応大だけではく大東文化大、流通経済大などがポッドを新たに採用。ポッドは、簡単に言えば、シェイプと同様にリサイクルベースの攻撃だが、FWとBKが関係なくボールを動かす。FWの選手がライン際のアタックラインに参加している場合も「たまたま」ではなく「意図的に立っている」わけだ。
ユニット間でボールを動かし、相手を崩す
FWやBKといったポジションに関係なく、次々と攻撃を仕掛ける 【斉藤健仁】
ラグビーでは攻撃側が常に意志決定権があり、ポッドは「ボールは人よりも早い」という原則に基づいている。そのため相手が組織ディフェンスを整える前に、攻撃側が順目ではなく縦に動くことでポジショニングを優先し、素早く球を出しつつ振り子のようにユニット間でボールを動かし、相手を崩す。
また、真ん中のポッドをおとりにしつつ大きく外に展開することも可能。基本的には両サイドのウイング(WTB)に相手が追いつかない状況を狙う。