ウクライナ情勢がサッカーに与えた影響 選手たちの運命を狂わせた悲しき砲弾
試合を1カ月間も開催できず
ウクライナ情勢悪化により、所属クラブを失ったコバル(左)は、ポーランドに新天地を求めた(中央が筆者の柴村) 【柴村直弥】
ウクライナ・プレミアリーグは3月からの試合は軒並み延期となった。3月15日に試合が再開するも、クリミア半島及び東部での試合は引き続き延期となったり、もしくは別の都市で行われる試合もあり、結局クリミア半島では1カ月にわたり試合が開催されなかった。
ウクライナリーグはUEFA(欧州サッカー連盟)ランキングではトップ10(8位)に入っている欧州の強豪リーグであり、国内でのサッカー人気も高い。14年4月16日、本来は3月2日に行われるはずだったリーグの大一番は1カ月半の延期を経てキエフで開催されたが、ディナモ・キエフ対シャフタール・ドネツクの一戦は5万9360人の観客でスタジアムが埋め尽くされたほどだ。
所属クラブが突然なくなるという事態に
3月16日、ご存じのようにロシア編入をめぐる住民投票がクリミア自治共和国ならびにセヴァストポリ特別市(以下クリミア)で行われた。賛成多数という結果を受け、ロシア側はクリミアはロシア領になったと主張するも、ウクライナ暫定政権はクリミアのみで領土に関する住民投票を行うことは憲法違反にあたり無効であると反発。米国、EU(欧州連合)もウクライナ暫定政権を支持し、クリミアをめぐる問題はいまなお続いている。
こうした中で、クリミア半島内のプロサッカークラブは、3月のリーグ再開から約1カ月、ホームであるクリミア半島内のスタジアムで試合をすることができず、他の地域での試合を余儀なくされた。さらにはFCセヴァストポリとSCタフリヤ・シンフェロポリ、及びジェムチュジナ・ヤルタは13−14シーズン終了をもって、ウクライナリーグから撤退。14−15シーズンはロシア3部リーグに参戦し、14年8月から試合を行っている。(UEFAはロシアリーグへの編入を正式には認めていないが困難な状況下も考慮して試合は禁止していない)
しかし、クラブがそのままロシア3部リーグへ移行したわけではない。ロシア3部リーグでは外国籍選手の登録が認められていないため、両クラブに所属していた多数のウクライナ人選手は選手登録ができず、クラブはいったん解散し、新しいクラブとしてロシア3部リーグへ参戦したのである。このことにより、13−14シーズンまで在籍していたこれらのクラブの選手及びスタッフのほぼすべての人は、所属クラブが突然なくなるという事態に陥った。