高松宮記念以来、２度目となる１２００ｍ戦。指揮官はリチャードのスプリントへの適性をどう感じているのか。

「３歳のクラシックは特別やし、ダイワメジャー産駒やからうまく息さえ入ればもつと思ってた。そのころは長めの距離をもたせるように作ってたしね。人間が思っていても外れていることはいっぱいあるし、決めつけるのは良くない。試していくことは大事やと思うからね。ただ、この仔は癇性がきつくてすぐに気持ちが入る。折り合ってるように見えても、ずっと力んで走ってる。能力があるからそれでも差のない競馬をして格好は付けるんやけどね。
　１２００ｍは絶対に走ると思ってたよ。確かに高松宮記念は、みんなが馬場のいい外めを回ってバラけたからもまれずに運べたし、この仔には走りやすい条件になったけど、１２００ｍは絶対にいいと思ってた」

　中山競馬場スタンドの改修工事により、今年は新潟競馬場での施行となる。ゴール前で急坂のある中山とは違ってフラットな新潟。このコース変わりをどう感じているのか。

「中山よりは新潟の方がいいと思うよ。別にコレといって理由はないけど、皐月賞のときはえらい馬がうるさかった。イメージが良くない。それが一番やな（笑）。あのときは距離も長かったんやけどな」

　１週前追い切りは浜中騎手を背に坂路で５１秒４−１３秒６。１６００万条件の馬に２馬身ほどの遅れをとった。

「遅れはしたけど、テンから速いペースでいって、バテてからしっかりと追って負荷をかけておきたかった。ＧIの１週前追いとしては、見た目は悪いかもしれへんけど、理想通りの時計。秋初戦としてはいい感じに仕上がってるよ」

　いよいよレースが近づいてきた。新王者として迎える初めての大一番。ライバルたちも順調に仕上がっている。

「ハクサンムーンはセントウルＳの競馬を見てもやっぱり力があるよね。高松宮記念ではあの馬は出遅れたし、がっちり競馬をしたわけではない。スピードの絶対値は向こうの方が上かもしれへんね。ストレイトガールも函館スプリントＳは詰まってまともに競馬ができてなかった。あの馬も強いでしょ。
　他にも力のある馬はいっぱいいる。ただ、今回は絶対にハナに行きたいというのがおらんし、もまれる心配はないんちゃうかな。スピードを生かすためにもできれば内枠がほしい。力の要る馬場でも勝負できる馬やから、荒れてきた馬場も悪くない。鉄砲駆けも利くからね。いいレースができると思うよ。今回はハナに行くつもりでいる。これは書いといてくれていいよ」

　道悪巧者の短距離馬か、それとも稀代のスプリンターか。今回こそ真価が問われる一戦であり、この壁を乗り越えれば世界への夢も見えてくる。新時代の幕開けとなるのか、決戦の日はもうすぐだ。（文中敬称略）

（取材・文：馬サブロー　安里真一）