植田と岩波、好対照な個性を持つ大型CB 再結成したコンビが見せたそれぞれの成長
U−17W杯でもコンビを組んでいた
岩波(写真)は早くから将来を嘱望されていた。植田とはU−17W杯でもコンビを組んでいる 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
大型CBながら足元の技術は高く、ロングフィードの質は群を抜く。同世代に比肩する選手の見当たらなかった岩波にとって、植田が現れたことは一つの幸運だったかもしれない。意識し合い、高め合うライバルとして、2人は競い合って伸びてきた。岩波と植田のコンビを擁して臨んだ11年のU−17ワールドカップを前にして、「今回のU−17日本代表ってどんなチーム?」と問われると、私は決まって「両CBが売りのチームですよ」と答えていた。聞いたほうは「日本の特長がCB?」と首をかしげたものだが、試合を見れば自然と納得してくれた。
それから3年、岩波と植田のコンビはアジア大会にて「再結成」となった。2人ともJ1の上位クラブでレギュラーの座をつかみ、それぞれの成長を遂げた。岩波もまた、熱血漢であり守備には独特のこだわりを持つ安達亮監督の薫陶(くんとう)を受けて、十代のころとはちょっと違う強さを身に付けた。
「球際」の強さを身につけたスマートな岩波
スマートなプレーが身上だった岩波だが、アジア大会では球際の強さも見せた 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
試合前、自分自身で強調していたのは「球際」。そこで戦い切ること、そして勝つことを胸に刻んで臨んだこの試合、岩波のプレーは出色だった。激しく当たり、眼前の敵をまず潰しに行く。研ぎ澄まされた集中力と旺盛な闘争心は、確実に韓国FWを圧倒してもいた。それでいて、植田がやらかした直後に「お前のミスは計算済みだ」と言わんばかりにゴールのカバーに入って失点の危機を救うなど、沈着さも健在。この試合のMOM(マンオブザマッチ)を選べと言われたら、私はためらいなく岩波を推す。そのくらいのプレーを見せていた。
「球際の強さは、今日は韓国と言うこともあってすごく個人的に意識して入った」。試合後にそう語った岩波は、「あの韓国を相手にこういう戦い方をできた」とポジティブに言葉を並べた。負けは負けだが、少なくとも個人としては確かな収穫を得た試合だったということだろう。ただ、韓国戦の出来が「特別」だったことは、「そういうのを毎試合毎試合続けないといけないと思う」と本人が認める通り。ただ、手倉森誠監督が「しぶとく泥くさく守る覚悟というのは、この年代の選手たちに付いてきた」と語った言葉の対象の一人が、岩波であったことは想像に難くない。
リオ五輪代表も「両CBが売りのチーム」へ
ただ、この2人が脱皮して、もうワンランク上の選手へなっていく。その道筋は見えた大会だったと言えるのではないだろうか。ここからリオ五輪に至るまでの時間は、2年弱。その舞台を前に「リオ五輪代表ってどんなチーム?」と問われたときに、自信を持って「両CBが売りのチームだよ」と答えることができる。そんな近未来くらいは見えてきた、アジア大会だった。