柔道・中村美里、リオへと踏み出す第一歩 手術を乗り越え、アジア大会連覇へ

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長期離脱からの復帰

ロンドン五輪後に受けた左ひざの手術で長期離脱していた中村美里。リオへの第一歩はアジア大会から始まる 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

「やっぱりリオデジャネイロ五輪を目指すには、ここでしっかり自分の柔道をアピールしたい」。19日に開幕するアジア大会(韓国・仁川)に女子52キロ級で出場する中村美里(三井住友海上)の穏やかな表情には、ようやく再始動できるという喜びが満ちている。けがによるブランクを経た25歳の元世界女王が、3度目の五輪に向けて踏み出す第一歩だ。

 今大会の柔道日本代表は、8月末に行われた世界選手権(ロシア・チェリャビンスク)の代表入りを逃した選手が中心となる。北京五輪銅メダリストにとって「2番手」の立場は居心地が良くないはずだが、「大きな大会という意味では同じ。いつも通りに調整して、最高のパフォーマンスが出せるようにするだけ」。長期離脱から復帰後初となる大舞台で、4年前の中国・広州大会に続く連覇を狙っている。

膨らんだ意欲の先の再手術

 ここに至るまでの2年間で経験したのは、柔道人生で初めて味わう迷いと苦闘だ。ロンドン五輪後の2012年10月、長年にわたり悩まされてきた古傷の左ひざの前十字じん帯再建手術に踏み切った。この決断は当然、4年後のリオ五輪に向けた準備のスタートと思われたが、「その時点では五輪は考えていなかった」と本人は振り返る。

 19歳で銅メダルを獲得した北京五輪の後、すぐさま4年後の金メダルに照準を定めて走り続けてきた。世界選手権を2度制し、優勝候補として勇躍挑んだロンドン五輪で待っていたのが、よもやの初戦敗退。心身のダメージは察するに余りある。さあ4年後、という意欲がすぐに湧いてこないのも無理からぬところだ。

 ロンドンから帰国後、リオ五輪への意気込みを問われるたびに周囲との温度差を感じていた。「『あ、頑張ります』と笑顔で対応しながら、まだ目指すと決めていないのにな、と」。応援してくれる人々の期待を裏切るわけにもいかず、かといって自分自身のスイッチはオフのまま。複雑な心境だった。

 ようやく気持ちが五輪へ向き始めたのは、本格的に練習を再開した昨年9月頃。体が思った通りに動くようになるにつれて、「よし、いける」と意欲が膨らみ始めた。しかし、再起の道はすんなりとはいかなかった。練習の強度を上げると、手術で埋めたボルトがずれてひざに炎症が起き、水がたまるようになった。

 復帰戦となった同年11月の講道館杯では何とか優勝を飾ったものの、翌12月には再手術を受けてボルトを除去。またしばらく畳を離れることになる。

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