柔道・中村美里、リオへと踏み出す第一歩 手術を乗り越え、アジア大会連覇へ

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リハビリ仲間から多くの刺激

13年11月の講道館杯では優勝したものの、再手術を受けることに。しかしリハビリ仲間との触れ合いで、大きな刺激を受けた 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 アクセルとブレーキを交互に踏むような、かみ合わない日々が続いたが、「苦しくはなかったですよ。逆に考える時間があったから良かった」。国立スポーツ科学センター(JISS)で出会ったリハビリ仲間との触れ合いが、多くの刺激を与えてくれた。

 アルペンスキー、ハンドボール、カバディ……。それまで柔道一筋で過ごす中では接点のなかった他競技のアスリートと一緒に過ごし、ときには試合を観戦する中で、「視野が広がったというか、いろんなことが見えるようになった」

 五輪でメダルを量産してきた柔道とは違い、アマチュア競技の多くは資金面で苦労が絶えない。自腹を切って海外遠征に出ているなど、さまざまな苦労話を耳にしながら「柔道は恵まれているなと思ったし、そういうのを考えながらやらないといけないと思った」。自分の置かれた立場や環境を客観的に見られるようになったことで、あらためて競技に打ち込む意欲が湧いてきたのだ。

久々の優勝で復活に手応え

 そんな精神的な変化に加えて、技術面でも着実に成長を実感している。以前は国際大会と代表合宿でスケジュールが埋まり、調整に追われる中で腰を据えて技を磨く時間も取れなかった。まさにケガの功名というべきか、日本代表から離れたことでその余裕が生まれた。「今はやりたいことができている。所属でしっかり練習したり、技をつくったり」。得意の足技の切れは増している。

 その成果は日を追うごとに現れてきた。2月のグランドスラム・パリ大会はひざが本調子でなかったこともあり2回戦敗退に終わったが、4月の全日本選抜体重別選手権では準優勝。そして7月のグランドスラム・チュメニ大会(ロシア)で久々の国際大会優勝。「内容はまだまだなんですけど、優勝できたということで自信がつきました」と語る通り、復調の階段を一歩ずつ上がってきた。

視線の先にあるのは3度目の五輪

 再び日の丸を背負って戦う今大会。全7階級で金メダル3つ以上という目標を掲げる女子代表の南條充寿監督は「ここで一発勝負してやろうという意気込みをみんなが持っていると思う。この結果がどこにつながっているかは分かっているはず」と、各選手に奮起を促す。

 8月の世界選手権で金2つを含むメダル5つと復権の足がかりをつかんだ日本女子の中で、序列を覆すには結果と内容の両方でアピールするしかない。その競争がリオ五輪での勝利につながると説く南條監督は、実績のある中村について「あらゆる経験をしている選手だし、ここに懸ける思いはものすごく強い。力を出してくれると思うし、7割方、力は戻ったんじゃないかと思う」と期待感を隠さない。

 中村が不在の間に、52キロ級では同い年の橋本優貴(コマツ)が台頭。2年連続で世界選手権代表に選ばれ、昨年の大会では銅メダルを獲得している。とはいえ、ひざの状態が万全ならば自分こそが第一人者であるというプライドが中村にはある。「気持ちも含めて全部がそろえば勝てると思いますけど、まだそれには到達していないので。あと2年でそれをつくっていけたらいいと思う」

 あくまで視線の先にあるのは3度目の五輪の舞台。「焦りは特にないです。自分のペースで、チャンスをもらった今回のアジア大会のように一つ一つの試合で結果を出していけばいいと思う」。遠回りした分だけ、今自分がやるべきことは明確に見えている。

<了>

アジア大会2014韓国仁川

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