野津田岳人、恐怖を生み出す特別な左足 彷彿とさせる“久保竜彦以来”の爆発力

中野和也

その左足で、決めてくれ

右サイドに配置されているのは、左足でのシュートを生かすため。指揮官の期待に応えられるか 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 U−21日本代表の手倉森監督が野津田に期待するのも、この左足の爆発だろう。実際、彼の登録はMFではなくFW。指揮官の「点を取れ」というメッセージが、この何気ない部分にも秘められている気がしてならない。相手の強固なブロックを破壊しつくす豪快なシュートは、同世代では他の追随を許さない。逆に言えば、野津田の場合は他に余計なことを考えない方がいい。コンビネーションを使えないことはないし、パスも出せないことはない。ドリブルもできないことはない。ただ、そういうプレーは、他にもっと得意な選手がいる。ワイドに流れてのクロスを指揮官も求めていないのは、彼を左ではなく右に配置していることでも明白だ。

 シュート、シュート、シュート。

 野津田岳人よ、シュートを撃て。

 誰が決めるんだ。俺が決めるんだ。

 ゴール前でパスなどは、一切、考えなくていい。

 気の利いたパスとか、おしゃれなループとか、それは今の彼には似合わない。似合うような経験を積み重ねた後に、考えればいい。いつもは周りを思いやる優しさを持つ男だが、ピッチに立てば気を遣う必要はない。

 俺が撃つ。俺が決める。俺がチームを救う。

 そんなエゴイスティックな気持ちで、彼はちょうどいいのだ。昨年の清水エスパルス戦(IAIスタジアム日本平)で決定的なシュートを決められず、次に訪れたカウンターのチャンスでフリーの川辺駿にパスを出さず、自分で決めに行って失敗した。周囲からは「ジコチュウなプレーをするな」と叱責もされたが、「点を取れなかったことは申し訳なく思っても、シュートの選択そのものに後悔はなかった」と野津田は言う。それでいいのだ。

 シュートだ、シュートを撃て、決めてやれ!

 野津田岳人は、それでいい。それが、いいのである。

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著者プロフィール

1962年生まれ。長崎県出身。広島大学経済学部卒業後、株式会社リクルートで各種情報誌の制作・編集に関わる。1994年よりフリー、1995年よりサンフレッチェ広島の取材を開始。以降、各種媒体でサンフレッチェ広島に関するリポート・コラムなどを執筆。2000年、サンフレッチェ広島オフィシャルマガジン『紫熊倶楽部』を創刊。近著に『戦う、勝つ、生きる 4年で3度のJ制覇。サンフレッチェ広島、奇跡の真相』(ソル・メディア)

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