ケネディ大使も参加 3000人が復興支援 第2回「ツール・ド・東北」が開催

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祖父から孫へ 受け継いだ自転車で60キロ完走

 一番距離が短いコース、60キロの女川・雄勝フォンドのスタートから約5時間がたった12時頃、完走者が続々とゴールゲートをくぐっていった。
 地元出身の14歳・高橋弥夢くんもゴール。弥夢くんは最近BMXに乗り始め、自転車競技にはまり始めていると話す。
「自転車に乗り始めたきっかけは、震災後なんですけど、夜散歩しているときに自転車のチームに出会いました。そこに混ぜてもらって、乗り始めました」

孫の高橋弥夢くん(左)と祖父の佐々木信治さん(右)。妹もうちわを持って応援 【スポーツナビDo】

 弥夢くんの乗る自転車は、実は祖父である佐々木信治さんが乗っていたもの。災害の影響でフレームの部分が悪くなってしまっていたものの、知人に部品交換などの修理をしてもらい、受け継いだのだという。この日は、元々の自転車の所有者である信治さんと一緒に参加し、「今まで、なかなか一緒に運動することがなかったので、一緒に走れて本当に良かったです。来年も一緒に走りたい」と目を輝かせていた。
 一方の信治さんも「坂道で心臓はバクバクでした」と苦笑いもあったが、「(孫と参加できて)最高ですね。娘(弥夢くんのお母さん)もサポートに来てくれて応援してくれたので、こういう機会を設けてもらいありがたいです。ぜひまた参加したいです」と、最高の笑顔を見せていた。

手話での“声援”も 聴覚障害のアスリートも完走

 女川・雄勝フォンドの参加者に続き、100キロを超える距離を走ったライダーたちもゴールにたどり着いた。

 170キロの南三陸フォンドでは、聴覚障害を持つアスリートの早瀬憲太郎、久美ご夫妻が見事に完走した。2人は2013年に開催されたデフリンピック(聴覚障害者のオリンピック)の自転車競技日本代表選手で、現在は17年のデフリンピック(トルコ)を目指して活動している。

デフリンピック元日本代表の早瀬さんご夫妻は、170キロのレースを完走 【スポーツナビDo】

 自転車競技の代表といっても、元々はマウンテンバイクの選手で、舗装路を走るロードバイクに乗って100キロ以上走るのは初めて。完走には不安もあったようだが、「チーム仲間のサポートのおかげで完走でき、エイドステーションや沿道の方々のエールはものすごく励みになりました。達成感でいっぱいです」(久美さん)と満足な表情を見せていた。また憲太郎さんも「(アップダウンが激しい)人生と同じようなコースで、上りは苦しい時、下りは楽しい時、それを人生になぞらえながら走っていました。被災された方々も今、同じ人生の上りを一緒に走っているんだなという思いが、応援の中で伝わりました」と沿道で応援する地元の方々の気持ちを一心に受けて走れたことがうれしかったという。
 中には、手話での『頑張れ』という応援も。細かな心配りがまた、エネルギーに変わった。

 2人とも走っている最中は苦しさを感じていたようだが、走り終えた後の感想を聞くと「来年は170キロの2倍は走りたい」(憲太郎さん)「次は220キロも走れたらな」(久美さん)と、もっと長い距離を走ってみたいと意欲に満ちていた。

 多くの参加者たちが感じた「応援していたら、応援されていた」という感覚。地元の人たちの声援を受け、ライダーたちが笑顔で走り抜けるこのイベントを続けていくことが、地元を元気にする復興支援と、震災の記憶を未来に残して風化させないことにつながる。来年はさらなる「笑顔」の上積みに期待したい。

(取材・文:尾柴広紀/スポーツナビ)

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