新生日本は千変万化のチームを目指せるか 脱・一本調子へ“つかみ”はOK

河治良幸

ウルグアイ戦で武藤(右)の投入後、システムを変更したアギーレ監督。変更に込めた監督のメッセージとは? 【Getty Images】

 5日、ハビエル・アギーレ監督率いる新生日本代表がその初陣を迎えた。「4年後」を意識させるメンバー構成の中、日本はウルグアイに0−2で敗れた。この「最初の90分」で見えてきたもの、あるいは見えてこなかったものとは何なのか。今回は、情熱の分析家・河治良幸が戦術面から初戦を紐解く。「4−3−3」から「4−4−2」への変更にアギーレ監督が込めたメッセージとは何だったのだろうか?

唐突な布陣変更の真意とは?

 後半23分ごろ、交代で左に入っていた武藤嘉紀が右に回り、本田圭佑と岡崎慎司が前線に並んだ。左のインサイドにいた田中順也はさらにワイドなポジションを取り、細貝萌が森重真人とダブル・ボランチを形成した。「4−3−3」から「4−4−2」への布陣変更だ。

「相手にリードされている状況で、本田を守備に回すのを少なくするためのシステム変更だった。彼をより前で、よりフリーでプレーさせるという意図があった」とアギーレ監督はそう振り返る。その直後にミスが出て失点したが、引いた相手に対して攻撃に人数をかけ、ポイントを高くするという狙いは理解できた。

「4−3−3」は攻撃時にセンターバック(CB)の間にアンカーが入ることでビルドアップの起点を確保し、守備ではバイタルエリアに縦のボールを入れさせないメリットがある一方で、全体の重心が後ろに下がる傾向がある。アギーレ監督はポゼッションを意識したシステムとして考えているはずだが、「4−4−2」はより効率よくサイドを突き、最後は2トップをシンプルに生かすという速攻志向の強いシステムとなる。

 もちろんシステムは対戦相手とのかみ合わせで意味も効果も違ってくるが、この試合に関してはウルグアイのプレッシャーが強く、攻守のバランスが重視されるノーマルの時間帯は「4−3−3」、ウルグアイが引き気味になり、しかもリードされているスクランブルの時間帯は「4−4−2」にシフトしたということになる。

 フレキシブルな戦い方という方向性は就任会見でも語っていたが、「今日の試合で初めてやりました」と細貝。終盤に出た森岡亮太も「練習では1回もやってないです」と語るように、選手にとっては予期しない変更だった。練習でやらなかったのは単に時間がなかったのか、選手の対応力を見るためにわざとやったのか。あるいはその両方だったのかもしれない。

 スタートの「4−3−3」にしても、アンカーがビルドアップ時にCBの間に入ることなど基本的な動きは指示されていたものの、どの位置からプレッシャーをかけるかなど、ディテールは選手に任されていたようだ。現時点で伝えるべきことと、選手たちで判断させることをハッキリ線引きしていたのだろう。

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著者プロフィール

セガ『WCCF』の開発に携わり、手がけた選手カード は1万枚を超える。創刊にも関わったサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』で現在は日本代表を担当。チーム戦術やプレー分析を得意と しており、その対象は海外サッカーから日本の育成年代まで幅広い。「タグマ!」にてWEBマガジン『サッカーの羅針盤』を展開中。

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