2020東京招致成功から1年を振り返る 東京五輪・パラリンピックの準備は今

高樹ミナ

二転三転の末、ようやく始まる国立競技場の建て替え

二転三転の末2015年10月から新国立競技場の建設が始まることとなった 【写真:東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会/ロイター/アフロ】

 東京招致成功前から話題を集めていたのが国立競技場の建て替えだ。独立行政法人日本スポーツ振興センター(JSC)が管理運営する同競技場は、2020年東京オリンピック・パラリンピックのメインスタジアムになるだけでなく、19年9〜10月に開かれるラグビーワールドカップの会場にもなることから、19年3月の完成をめざしている。

 国際コンペティションの末、イギリスの女性建築家ザハ・ハディド氏の斬新なデザインが採用されたのは12年11月。翌年9月にはオリンピック・パラリンピックの東京開催も決まり、国立競技場の建て替えは幸先のいいスタートを切ったように見えた。ところが、当初見込んでいた総工費約1300億円は、その後の試算で約3000億円に膨らむことが判明。延べ床面積を2割以上削るなどしてデザイン変更した後、総工費は約1625億円に落ち着いた。また最近では8月に、文部科学省と事業主体のJSCが開閉式屋根の設置と、それに伴うコンサート利用の増加などで年間約3億3000万円の黒字を確保できると発表。選定が長引いていた解体業者も決まり、解体工事は予定より2カ月遅れの9月末に開始され、来年10月からはいよいよ新国立競技場の建設が始まることとなった。

スポーツ庁新設に向けた政府の取り組み

 政府は文部科学省の外局として、15年4月のスポーツ庁新設をめざし、急ピッチで準備を進めている。スポーツ庁は2020年東京オリンピック・パラリンピック開催に向けたシステムづくりと、その先の日本のスポーツ振興を担う。そのスポーツ庁をめぐりさまざまな議論があるなかで、公的資金による選手強化費の流れにメスが入った。国の補助金(平成14年度は約26億円)はJOCから各競技団体(NF)へ分配されているが、ここ数年、一部競技団体の不正受給やずさんな経理が明るみになったことで、スポーツ庁の在り方を検討する超党派のスポーツ議員連盟のプロジェクトチームが体制変更を提案。資金の流れを透明化するため、JOCを通さず、スポーツ庁所管の新たな独立行政法人から競技団体へ直接強化費を分配する一元化案を今年6月にまとめたのだ。これに異論を訴えたのはJOC。従来担ってきた強化費配分と強化戦略の司令塔の役割を奪われる形になることから、議員連盟に現行体制の継続を求める要望書を提出、一元化案は議論不十分で差し戻された。

 こうした一連の動きには政治的、組織的な主導権争いが見え隠れするが、選手強化費は日々努力を重ねる選手たちを支える貴重な税金だ。2020年東京オリンピック・パラリンピック成功と日本のスポーツの成熟のためにも、新設されるスポーツ庁には選手強化費をより計画的・戦略的に運用し、国民によりわかりやすい形で説明していくことが求められる。

 2020年東京オリンピック・パラリンピック開催に向けた準備はスポーツだけでなく、都市づくりや交通網の発達、観光の活性化、通信、医療、セキュリティーなどの発展、あるいは教育、文化・芸術に至るまで幅広い分野に影響を与えることになる。

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著者プロフィール

スポーツライター。千葉県出身。 アナウンサーからライターに転身。競馬、F1、プロ野球を経て、00年シドニー、04年アテネ、08年北京、10年バンクーバー冬季、16年リオ大会を取材。「16年東京五輪・パラリンピック招致委員会」在籍の経験も生かし、五輪・パラリンピックの意義と魅力を伝える。五輪競技は主に卓球、パラ競技は車いすテニス、陸上(主に義足種目)、トライアスロン等をカバー。執筆活動のほかTV、ラジオ、講演、シンポジウム等にも出演する。最新刊『転んでも、大丈夫』(臼井二美男著/ポプラ社)監修他。

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