新生アギーレジャパンの意図を解き明かす ポジション別に見る指揮官の好みとは?

川端暁彦

中盤の構成はどうなる?

Jリーグで充実のパフォーマンスを見せている柴崎はインサイドハーフで起用か 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

【アンカー】
長谷部誠(フランクフルト/ドイツ)
細貝萌(ヘルタ・ベルリン/ドイツ)

【主な落選】
阿部勇樹(浦和)、高橋秀人(FC東京)、小林裕紀(新潟)、米本拓司(FC東京)

「4−3−3」と言われるシステムの肝は、二人のCBの前方に位置するこのアンカーのポジション。守備に強く、なおかつ組み立てもできる選手が望ましい。このポジションも左SBと同じく海外組で「枠」が埋まってしまったのかもしれない。長谷部のみがワールドカップ(W杯)からの継続選出だが、ザック体制でも継続してメンバー入りしていた細貝の復帰も、特に新規性はない。

 機動力に富み、飛び出していくプレーを得手とする長谷部のアンカー起用は意外な印象もあるが、30歳(4年後には34歳)という年齢を思えば、むしろ新しいプレースタイルを確立できるかどうかが問われる段階なのかもしれない。


【インサイドハーフ】
田中順也(スポルティング・リスボン/ポルトガル)
森岡亮太(ヴィッセル神戸)※初選出
扇原貴宏(C大阪)
柴崎岳(鹿島)

【主な落選】
遠藤保仁(G大阪)、中村憲剛(川崎)、高萩洋次郎(広島)、長谷川アーリアジャスール(C大阪)、清武弘嗣(ハノーファー)、茨田陽生(柏)、土居聖真(鹿島)

 前政権時代から「候補」と目されていた柴崎と扇原の選出は予想の範囲内だった。長身かつ左利きという扇原の個性が買われたのは容易に想像がつくし(候補になりそうな左利きのボランチタイプは扇原くらい)、柴崎は現在のJリーグのパフォーマンスを見れば選ばない監督のほうが珍しいだろう。34歳の遠藤は選外になったが、将来性だけでなく現時点でのプレーぶりという意味でも柴崎に軍配が上がるのは否めない。

 初選出の森岡は純粋なトップ下タイプのファンタジスタ。周りが見えるタイプなのでインサイドハーフとしても攻撃面での問題はないだろう。あとは守備面で違いを出せるかどうか。左足に特別製のキャノン砲を具備する田中はFWの印象が強いかもしれないが、この位置で個性を出せる選手だ。

CFは飛び出しよりも高さのある選手?

CFにも皆川のような屈強な肉体を持つ長身FWを置く可能性がある 【写真:伊藤真吾/アフロスポーツ】

【右ウイング】
岡崎慎司(マインツ05/ドイツ)
本田圭佑(ミラン/イタリア)

【左ウイング】
武藤嘉紀(FC東京)※初選出
柿谷曜一朗(バーゼル/スイス)

【主な落選】
大久保嘉人、小林悠(共に川崎)、永井謙佑(名古屋)、香川真司(ドルトムント/ドイツ)、乾貴士(フランクフルト)、齋藤学(横浜FM)、原口元気(ヘルタ・ベルリン)、宇佐美貴史(G大阪)、南野拓実(C大阪)

 右ウイングは岡崎と本田が定位置を争うという前政権時代は考えられなかった形になるかもしれない。本田はミランでまさに右ウイングとして結果を残しつつあり、違和感はなさそう。初選出となったFC東京・武藤は負傷辞退者に代わって呼ばれたとアギーレ監督が明言しているので、辞退した香川か原口の代わりということだろう。

 後述するように、センターFW(CF)以外での起用が考えにくい選手が他に2人も入っていることを思えば、柿谷も(そして岡崎も)ウイング起用を考えられているのではないか。アギーレ監督は典型的なCFを中央に据えるタイプのようだ。落選組の中央で起用したくなる選手(大久保、永井、宇佐美)をウイングのカテゴリーに含めたのは、このためだ。

【CF】
大迫勇也(ケルン/ドイツ)
皆川佑介(広島)※初選出

【主な落選】
豊田陽平(鳥栖)、興梠慎三(浦和)、ハーフナー・マイク(コルドバ/スペイン)、工藤壮人(柏)、川又堅碁(名古屋)

 柿谷や岡崎をウイングの候補と見なしたのは別の理由もある。大型化を目指す傾向が顕著な今回の選考を思えば、日本代表の新指揮官は最前線の柱であるCFに関しても、柿谷や岡崎のような裏への飛び出しに秀でるタイプではなく、高さのある選手を置くのではないかと考えたからだ。実績の乏しい皆川を選んでいることからも、彼のような屈強な肉体を持つ長身FWを探していることの反映のように思える。もちろん、もっとオーソドックスな選択肢として「2トップ採用」という可能性もあるだろうが、これもまたフタを開けてみなければ分からない、つまりは初戦の注目ポイントと言えるだろう。

アギーレジャパンの10月に嵐あり?

 新たに選ばれた選手や代表での実績がない復帰選手が軒並み1990年以降に生まれた選手であることを思えば、アギーレ新監督が来年1月のアジアカップ以上に、4年後の「ロシアW杯」を見据えていることは想像に難くない。むしろ今回は、アジア大会に出場するU−21代表の選手たちを選ぶことができず、時間不足で海外組については前任者の選考を踏襲する形になったがために「穏やかな選考」だったのではないかという推測すら成り立つ。

 10月のシリーズでは、よりラジカルなメンバーの入れ替えがあると見る。強い競争意識にさらされる現メンバーには小さからぬ影響があるだろうし、「代表」という目標が見えたJリーグの若手選手たちにとってはモチベーションに火がつく材料となったはず。その効果を最大化するには、今回初選出となった選手たちが5日のウルグアイ戦、9日のベネズエラ戦でその力を見せること。まずはそれに期待している。

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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