現地時間８月３０日に米国カリフォルニア州サクラメントのスリープ・トレイン・アリーナで開催される「ＵＦＣ１７７」（日本時間３１日午前１１時よりＷＯＷＯＷプライムにて生中継）。メインではバンタム級王者ＴＪ・ディラショーが前王者ヘナン・バラオンを相手に初防衛戦を行なう。両者は５月の「ＵＦＣ１７３」で対戦したばかりであり、この時はディラショーが王者バラオンを５ＲにＴＫＯし、ベルトを奪取した。今回は、わずか３カ月のインターバルでのとなる。
　デイナ・ホワイトＵＦＣ社長が「私はすぐに２人の再戦が見たい。バラオンは１０年近く無敗で、“パウンド・フォー・パウンド世界最強”と言われていた。だから彼にはすぐリマッチする資格がある」と、この再戦を決定したのだ。「次はどんなバラオンが見られるのか、楽しみでしょうがない。絶対にエキサイティングな試合になるぞ！」とデイナ社長は大いなる期待を語っている。

　デイナ・ホワイト社長の言うように、前回の対戦までバラオンは、０５年４月のデビュー戦で判定負けして以降３４勝１無効試合という戦績で９年間無敗だったし、ディラショーの先輩であるユライア・フェイバーにも２度勝利していたので、ディラショーにもあっさり勝つだろうと思われていた。しかしディラショーは、大方の予想を覆し、初回からバラオンを打撃で圧倒、大番狂わせを起こして見せたのである。
　ＦＯＸ ＳＰＯＲＴＳのマイク・チアペッタは、この結果を評して「総合格闘技史上で５本の指に入る大アプセットだ！」と言っている。たしかに、筆者を含めて多くの関係者やファンが「またバラオンが連勝記録を伸ばすのだろう」と予想していた。

　だがディラショーは、１Ｒから両手のガードを下げた状態でバックステップを多用し、構えを左右に頻繁にスイッチしてバラオンの打撃の間合いを狂わせ、フェイントを多用しつつ、さまざまな角度や高さからパンチやキックを叩き込んで王者を削っていった。そして最終回の５Ｒに左ハイキックでグラつかせると、パンチを連打し、倒れたバラオンをパウンドで仕留めたのだ。
　試合前、ディラショーのヘッド・コーチであるドウェイン・ラドウィックは「問題は最初の２、３Ｒをしのぐことだ。バラオンはかなり減量してるからスタミナに不安があるはずだ」と語っていたが、たしかに試合後半、バラオンは動きが鈍ってきていた。フットワークとフェイントと間合い、そしてスタミナが、前回のディラショー勝利のカギとなったと言えそうだ。

　しかし今回は、バラオン陣営が逆にディラショーの戦い方を徹底的に研究してくるはずだ。その上、９年ぶりの敗戦と生涯初のＴＫＯ負けという屈辱を味わったことで、バラオンは、かつてなく燃えている。
　バラオン自身は前回の敗戦に試合について、こう語っている。
「試合開始から間もなく、強烈なアッパーをもらって意識が飛んだ。あとは体が自動的に動いていただけだった」
　実際、５Ｒにパウンドの雨を降らされてレフェリーに試合を止められた後、バラオンは「俺が勝ったのか？」とセコンドに聞いている。おそらく開始から２分前後のアッパーで意識が飛んだのだろう。しかし、そんな状態で５Ｒまで戦い抜いたのも凄い。
「前回は、いろいろなことがうまく行かなかった。試合前に手をケガしてしまい、いつものようにハードな練習ができなかった。だからオクタゴンに入った瞬間『今日はいい日にならないな』と感じたよ」と前王者は語った。「だけどこれまでにないほど猛特訓して、本来の自分を取戻し、絶対ベルトを奪還するぜ」
　そんな復讐に燃える“手負いの獅子”バラオンを、ディラショーはみごと返り討ちにして初防衛を果たすことができるのか？　
「世界王座を獲ることより防衛する方が難しい」とボクシングではよく言われるが、ＵＦＣでも同じことが言える。新王者ディラショーが、真価を問われる初防衛戦だ。

（文：稲垣　收／ＷＯＷＯＷ　ＵＦＣ解説者）

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◆◆◆　ＷＯＷＯＷ番組情報　◆◆◆
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まさかのＴＫＯ負けでタイトルを失ったヘナン・バラオンがベルトを取り戻すためのダイレクトリマッチに挑む！　波乱を巻き起こした新チャンピオンは王座を守れるか。
８月３１日（日）午前１１：００〜［ＷＯＷＯＷプライム］※生中継

[主な対戦カード]
＜バンタム級タイトルマッチ＞
ＴＪ・ディラショーvs.ヘナン・バラオン

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９月２０日（土）午後２：３０〜［ＷＯＷＯＷライブ］※生中継

[全対戦カード]

フェザー級　５分３Ｒ：マキシモ・ブランコvs.ダン・フッカー ライト級　５分３Ｒ：徳留一樹vs.ジョニー・ケース
バンタム級　５分３Ｒ：カン・ギョンホvs.田中路教
ウェルター級　５分３Ｒ：イム・ヒョンギュvs.佐藤豪則 フェザー級　５分３Ｒ：菊野克紀vs.サム・シシリア ウェルター級　５分３Ｒ：国本起一vs.リチャード・ウォルシュ
フライ級　５分３Ｒ：堀口恭司 vs ジョン・デロス・レイエス
バンタム級　５分３Ｒ：金原正徳vs.アレックス・キャセレス
女子バンタム級　５分３Ｒ：ミーシャ・テイトvs.中井りん
ウェルター級５分３Ｒ：秋山成勲vs.アミール・サドラー　 ライト級　５分３Ｒ：五味隆典vs.マイルズ・ジューリー メインイベント　ヘビー級　５分５Ｒ：マーク・ハントvs.ロイ・ネルソン
[関連番組]
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