W杯の失敗をいかにして未来へつなげるか 選手、協会、Jリーグに望むこと<後編>
W杯に出場した選手に課される仕事
権田(左)、酒井宏(中央)は出場機会こそなかったが、次の世代にこの経験を伝えていくことが望まれる 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
だからこそ、今回のブラジル大会に参戦したメンバーには、この経験を将来に引き継ぐ主導的役割を果たしてほしい。「Jリーグの代表としてW杯に来た」と公言していた青山敏弘も「僕らが高い意識を持ってピッチ上で表現していくしかない」と貴重な生き証人としての責任感を口にしていた。
ピッチに立つ機会こそなかったものの、12年ロンドン五輪4位の実体験している権田修一も強い自覚を持つ1人である。
「五輪の時はそれが終わってすぐにA代表に合流することになったんで、あまり自分たちがやってきたことを振り返る時間がなかったけど、今回は帰国便に乗って日本に戻り、天皇杯のゲームが始まるまでだいぶ時間がありましたし、いろいろ落ち着いて整理できた。自分は岡田さんの時は1試合呼ばれただけだったけど、ザッケローニ監督の4年間はずっとチームにいた。その過程でどこがチームのストロングポイントなのか、ウイークポイントなのかを実感してきたし、その時々の雰囲気も分かった。そういう1つひとつを先へつないでいかないといけないと思います。
これまでの日本は決勝トーナメント進出の次がグループリーグ敗退という繰り返しになっているけど、監督が代わってすべてゼロからスタートすることではないと思う。新しいチームが始まればメンバーも変わるでしょうけど、今回の経験を踏まえてもう一段階上を目指すためにも、次に残る若い世代がやってきたことを引き継いでいけたらいい。もちろん自分はまずそこに入れるように頑張ることが第一ですけどね」と彼は自分たちに課せられた仕事をよく理解している。
権田はロンドン五輪で4位という好結果を残す原動力になった後、協会の原専務理事らに「ピッチ上で何を感じたか」を聞かれる機会があったという。例えば、そういう選手に対するヒアリングを組織的かつ継続的に行って、将来に役立つデータとして蓄積していくことはできないだろうか。
サッカー界が発展するために
アギーレ新監督には、ブラジルで直面した課題や収穫を生かしたチーム作りが求められることになる 【写真:伊藤真吾/アフロスポーツ】
「今回、ドイツが優勝したのも、代表と国内リーグがうまくリンクしているからじゃないかと思いますね。次の(ハビエル・)アギーレ監督がどういう考えを持っているかまだ分からないけど、情報は嫌でも僕ら選手に聞こえてくる。それを頭に入れながら、クラブで地道にやっていくことが、チームと代表両方の強化につながるんじゃないかと思います」と今野も神妙な面持ちで語っていた。
ブラジルでの惨敗をひしひしと受け止めている選手たちの声に、協会やJリーグはぜひ耳を傾けてほしい。そして、ブラジルで直面した課題、得た収穫をより多くの人々が考え、議論を続けていくような機運を高め、サッカー文化を構築していくように仕向けてもらいたいものだ。