RISE女王・神村エリカが引退発表

中村拓己

22歳の若さで現役引退を決断したRISE女王の神村エリカ 【中村拓己】

 第2代RISE QUEEN王者・神村エリカが18日、所属するTARGETにて記者会見を行い、現役引退を発表した。
 神村は2008年、15歳の若さでプロデビュー。RISE QUEENを始め、六つのベルト・タイトルを獲得。シュートボクシングの女子エースRENAとの対戦など、女子立ち技格闘技の中心選手として活躍した。しかし昨年9月の試合を最後にリングから離れ、このたび現役生活にピリオドを打つことになった。

2010年から体調不良との戦い

昨年9月には悲願のRISE女王に 【長谷川亮】

 会見には神村と神村が所属するTARGETの伊藤隆会長が出席し、伊藤会長が引退までの経緯を説明した。
「2010年に戦極に出た時から神村に体調不良が見えるようになりました。実はあの時、神村は計量後に体調を崩してしまっていて、しばらくしたら体調も落ち着いて、試合当日も万全の状態ではなかったのですが、本人が『やる』と言うので試合をやらせました。しかしそれから神村は体調不良との戦いが続いて、神村自身、練習でも納得がいく練習が出来ずに不安を感じていました。

 神村という選手は完璧に練習をやらないとリングに上がりたがらない選手です。追い込むと体調が悪くなるので、追い込まないようにしていたのですが、それでは試合をしたがらない。それで色々と考え、今年に入って体調も優れないということでしばらく休んでみるか、と。しばらく練習を休ませていたのですが、体調も優れないということで引退を決意することになりました」

対戦相手が見つからず目標失う

体調不良に加え対戦相手が見つからないことも理由に挙げた神村(右) 【中村拓己】

 伊藤会長の言葉を受けて神村があいさつ。神村は引退の理由として伊藤会長も明かした体調不良、そして選手として目標を失ったことを挙げた。
「伊藤会長からあったように体調が優れないのが一番の原因です。22歳なのでまだまだやれるという声が出てくるのはイメージできるのですが、自分に見合った相手も見当たらず、目標になる選手がいない中で体を酷使して、現役を続けるメリットがあるのかという不安がありました。

 海外で試合をする、WBCムエタイの世界タイトルをやるといった目標があったのですが、相手が決まらない。私はミニフライ級(48kg)がベストで、そうなるとアジアにはもう相手がいなくて、ヨーロッパでは体重的に軽くて相手がいない。自分の階級も辞める理由になったと思います。

 また100パーセントの状態で試合ができないことが何回もあって、それで選手としての寿命が削れました。今年に入って練習はほぼゼロです。いい意味で後悔はないし、またやりたいと思うことはないと思います。それは選手としていいことだと思っていて、なかには引退を発表して復帰する人もいますが、私はそれを望んでいません。今が(引退するには)いい時期じゃないかなと思って決断しました。もうリングに戻ることはないと思います」

RISEベルト奪取で「一区切りついた」

“第2の神村”発掘へ子供たちの指導は継続する予定 【中村拓己】

 続く質疑応答で「2〜3年前から引退を意識するようになっていました。病院では(格闘技は)出来ないと言われていたのですが、RISEのベルトも獲っていなかったし、選手として目標があったので辞められませんでした」と打ち明けた神村。しかし去年9月にRISE  QUEENのベルトを巻いたことで「一区切りついた」と引退を決断した。

 体調不良の詳細を明かすことがなかったが、神村によれば「珍しい病気ではないけど完治するものではない」とのこと。選手として格闘技の練習を続けることはほぼ不可能で、TARGETでトレーナーとして活動を続けてはいるが、薬を飲みながら病状を和らげている状態だという。

 現役生活で「最も印象に深い試合は?」という質問に神村は「どれと決めることは出来ません」。改めて「一試合一試合にかけていたので、すべて思い入れがあります。ケガをしたり体調が悪くてボロボロの状態で戦って、それをリング上で見せることなく勝てた試合もあれば、絶対に勝てるだろうと思って勝てなかった試合もあります。私は一試合一試合で成長したので、どれもすべてに価値があって、その時の一番だという思い出です」と全身全霊を注いだ現役生活だと振り返った。

 現役引退後の第二の人生については「何かを定めようとは考えていません」と神村。「私は何か定めちゃうと、とことんやらないと気が済まなくなるので、いろんなことを経験して視野を広げたいと思います」と時間をかけて自分が進む道を探したいという。一方、TARGETでの指導は体調と相談して「指導のやり方を変えながら続けていきたい」方向で「ジムで指導している子供たちが私を目指して、私に教わりたいとジムに来てくれて『先生が指導をやっている間にチャンピオンになりたい』と言ってくれています。そういう子たちのためにも格闘技には関わっていかないといけないと思う」と子供たちの指導を通じて格闘技に携わっていくと語った。

 なお神村は保持していたベルトを返上。9月28日(日)後楽園ホールで行われる「RISE.101」にて引退式・セレモニーを予定している。
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著者プロフィール

福岡県久留米市出身。プロレスファンから格闘技ファンを経て2003年に格闘技WEBマガジンの編集部入りし、2012年からフリーライターに。スポーツナビではその年の青木真也vs.エディ・アルバレスから執筆。格闘技を中心に活動し、専門誌の執筆、技術本の制作、テレビ解説も務める。

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