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小笠原道大が導き出した「代打の極意」
新天地で体現する18年目の“成長”

日々準備を怠らない打撃職人

プロ18年目。中日に移籍して迎えた今季、代打の極意を極めつつある小笠原
プロ18年目。中日に移籍して迎えた今季、代打の極意を極めつつある小笠原【写真は共同】

 過去、中日には球史にその名を残した代打の切り札が存在した。1976年にシーズン代打本塁打7本のプロ野球記録を樹立した大島康徳、86年に代打6打数連続安打の球団記録を達成した名選手・谷沢健一、“ガニ股打法”で一躍人気者となった種田仁、晩年、代打としてファンを魅了し続けたミスタードラゴンズこと立浪和義……。


 そして今、新たに球団の歴史に名を残そうとしているのが、巨人からFA権を行使して中日に活躍の場を求めた小笠原道大だ。首位打者2回、本塁打王1回、打点王1回、最多安打2回とあまたのタイトルを獲得してきた侍が今季、代打という新たな役どころで、その力を発揮している。


 前半戦を終了した7月16日時点での打撃成績は52打数18安打、1本塁打、13打点、打率3割4分6厘。7月1日の横浜DeNA戦で放った安打から1四球を挟み、代打で6打数連続安打は球団タイ記録。連続打席出塁は9まで伸ばし、種田がマークしているプロ野球記録の11にも迫った。


 小笠原といえばセ・パ両リーグで最優秀選手を獲得するなど、その野球人生をレギュラーとして積み重ねてきたのだが、谷繁元信兼任監督から求められたのは1打席で結果が求められる代打だった。試合勘やリズムなどスタメンとは異なる部分が多いだけに、戸惑いや難しさはないのか――。今季初本塁打を放った4月9日の東京ヤクルト戦後、そんな問いかけを一笑に付す場面があった。


「代打は初めてだと言われていますが、最初(プロ1年目、2年目)は代打ですからね。毎年、ゼロからのスタートと思っていることなんですが、チームが変わったことでこれまで以上にという気持ち。1試合に1回、1打席という少ない機会の中で、なんとかしようという思いで、一瞬でも無駄にしないように心掛けています」


「過去の実績で野球をしてきたことなどない」と前置きし、今季は特に心機一転で臨んでいると明かした。そうさせる理由として、突如不振に陥った昨年までの3年間が少なからず関係しているはずだ。ニュートラルな状態に置きながら、それでも小笠原という選手の根底にあるものは変わらない。


「1打席、1打席、その瞬間がすべて。そのためにしっかり準備をして、その試合、その打席を迎える。その中で日々、成長していかないといけない。調子うんぬんではなく、その日、1日を全うできるかどうか。その積み重ねでここまで来ましたし、これからも同じようにやっていきたいと思います」


 2011年には2000本安打の偉業も達成し、いわば職人の域に達しようとしているプロ18年目が口にした“成長”の二文字は、ここまでの成績が見事に体現していると言えるだろう。

代打の極意は「打てる球を打つ」

 小笠原の代打の心得とでもいうべきか――。7月10日のヤクルト戦は1点ビハインドで迎えた7回、1死満塁という絶好の場面で2点タイムリーを放って逆転。チームに勝利をもたらした試合後のヒーローインタビューで少しだけその内容を明かした。


「代打なんでいろいろと考えていたら終わってしまう。ピッチャーが投げたボールに食らいつく気持ちで打ちました。打席に入ったらいろいろな状況はありますけど、何も考えずに白いボールを打つ、それだけなんです」


 シンプルなこの考え方は、開幕から約3カ月半を経て導き出したひとつの極意に値する。6打席連続安打や9打席連続出塁といった結果となって表れている。そこに至るまでのすべてがうまくいっていたわけではない。代打では5月15日のDeNA戦で二塁打を放ってから、7月1日のDeNA戦まで、約1カ月半にわたって快音が消えていたのだ。


「どのコースに(ボールが)来るのかなんて分からないですからね。絶対にここに来るなんてことはないので。ましてや相手投手が投げてくるボールも球種はいろいろとありますから、来た球に食らいついていく。その中でたまたま連続して結果が出ているとしか言いようがないんだけどね」


 結果に対しては「たまたま」という言葉が付け加えられたのだが、打席に臨む心構えには確固たる自信を持っている。


「1球に対して集中して、打てる球を打っていくかだけを意識して打席に立っています。それ以外はまったく考えていませんね」


 言葉に大胆さはないものの、極意として十分な説得力がある。今の小笠原には打席で一切の迷いなどないという揺るぎなさが、代打の成功率を上げている大きな要因だろう。

ベースボール・タイムズ
ベースボール・タイムズ

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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