小笠原道大が導き出した「代打の極意」、新天地で体現する18年目の“成長”

ベースボール・タイムズ

小笠原加入がもたらした攻撃力アップ

4月9日、ヤクルト戦で今季1号を放ち、出迎える谷繁監督とハイタッチを交わす小笠原 【写真は共同】

 昨季に比べて、今季の中日は攻撃力が上がっているというイメージが強いのではないか。7月23日時点のチーム打率2割6分7厘は、セ・リーグ3位、昨季終了時の2割4分5厘と比べれば大きく向上している。得点力においても379得点は1試合平均に換算すると4.4点。昨季は144試合で526得点、1試合平均3.7点であった。

 谷繁兼任監督も「打線は試合が終わる最後の最後まで粘っこく攻撃しよう、と言っていることができている」と手応えを口にしてきた。その中で小笠原は指揮官が訓示する戦い方を理解し、実行に移している1人と言える。代打起用時、23日現在で4割6分8厘という出塁率の高さがその理由である。小笠原自身、四球は安打と同等の価値があるととらえている。

「1本でも多く打てることに越したことはないんだけど、打つだけでなくつなぐことが大事。四球でもいいから出塁できるように、自分の仕事をしていきたいという思いだけです」
 
 切り札である小笠原は、好機で登場する場面が必然的に多いが、代打では12安打という数とほぼ同じ10四球を選んでいる(敬遠四球1を含む)。彼の打撃技術、実績を知る者であれば、やはり四球よりも試合を決める一打を求めたくなるだけに物足りなさを感じてしまうことだろう。しかし、今年のドラゴンズは先述した通り、チーム打率、得点率がともに上がっている。その要因の1つとして、小笠原が選んだ四球も挙げられる。

「みんながひとつの目標に対して全力でやっていることのつながり。それを大事にしていきたい」

 たとえ小笠原自身が決めなくても、好機をさらに拡大させることでチームの勝利につながる。表面化している数字以上に貢献度の高さは勝利に大きく関わっているのだ。

巻き返しに欠かせないさらなる活躍

 7月13日、広島戦では今季初となるカード勝ち越しを決めた試合後、最後に駐車場へと姿を現したのが小笠原だった。入念な体のケアを施していたのか、それとも次の試合への準備に費やしていたのか。試合が終わってから約3時間の行動を聞いてみたところ、なんとも肩を透かされるような回答が返ってきた。

「いやいや、今日は特に(何もないです)。いろいろと話し込んでいたので。また明日来てからやりますよ」

 その言葉を聞いた瞬間に、キャンプでも報道陣が立ち入ることのできない室内練習場で打ち込みを行っていたことが思い出された。努力する姿を他人に見せず、語ることもしない。本当に何もしていなかったのかもしれないが、前日、前々日も遅くまで球場に残っていたという事実があることだけは述べておきたい。足早にその場を後にしようとする小笠原に最後にひとつ、「代打という新たな役割を務め上げている中で、新たに見えてきたものはあるか?」と問うと、足を止めてゆっくりと口を開いた。

「今はまだシーズンの途中なので、1年間通してやってみての振り返りというのはあるのだと思う。今は一生懸命、1打席、1打席やっている段階。答えや結論、発見というのはないので、はっきりとしたものというのは言葉に出てこないです。それはまだ先になることだと思うので、そのときにまたよろしくお願いします」

 この時期にする質問ではなかったと反省をしながらも、しかるべき時が訪れたら再び問いかけたいと思った。打撃を極めし天才は、必ずや新境地を見いだすに違いないだろう。

 3年ぶりのリーグ制覇を目標に掲げたシーズンも、勝負の後半戦が始まった。球団初の連覇を成し遂げた、あの奇跡の逆転劇が再び起きるとすれば、そこには小笠原道大が主人公となるストーリーも必ず絡んでくるはずだ。劇的なドラマを堪能するべく、小笠原の1打席、1球を注視したいと思う。

(取材・文:高橋健二/ベースボール・タイムズ)

2/2ページ

著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント