C大阪、新監督就任で再スタート 結果出ずも新スタイルに手応えあり

小田尚史

初陣は逆転負けも、新たな戦い方を見せる

C大阪の新監督に就任したペッツァイオリ氏。初陣となった川崎戦ではすでに新たな戦い方を見せていた 【写真:アフロスポーツ】

 15日に行われた柿谷曜一朗のスイス・バーゼル移籍前、セレッソ大阪での最後の試合となったJ1第12節・川崎フロンターレ戦(AFCチャンピオンズリーグによる延期分)。この試合は、マルコ・ペッツァイオリ新監督にとってのJ1初陣でもあった。果たしてどんなサッカーを見せるのか。スタジアムに期待感が充満する中、19分だった。楠神順平、杉本健勇、南野拓実とつないだパスを最後は安藤淳が決めてC大阪が先制に成功した。さらに37分、得点にこそならなかったが、再び安藤が迎えた決定機は印象的だった。左サイドバックの丸橋祐介が1トップの杉本に当てて前へ出る。杉本が左ワイドの楠神に落とすと、楠神は上がってきた丸橋へとパス。丸橋が右ワイドの安藤に決定的なクロスを上げた──。

 奪ったら手数をかけず、素早くボールを前に運んで崩し切る。「縦を意識したサッカーをするのが私の哲学。3、4本と横パスを回すのは好まない」という監督の意思が反映された攻撃だった。この試合は守備でもアグレッシブ。ボールホルダーへの鋭いアプローチに加え、高い位置で奪い返して攻撃につなげる場面もたびたびあった。後半こそ、丁寧につないでプレスをはがしにかかる川崎のサッカーの前に押し込まれ、1−2で逆転負けを喫したが、新体制下での新たな戦い方の一端をピッチに描いて見せた点では、意義ある試合となった。

新監督は育成に長け、ドイツサッカーに精通

 今季のC大阪は世界的なストライカーであるフォルランを獲得。ランコ・ポポヴィッチ監督を新たに迎え、優勝を目標に掲げてスタートするも、ワールドカップ(W杯)による中断を前に4勝4分5敗と思うように結果を残せなかった。中断前最後の試合となった第14節(5月17日)の浦和レッズ戦後、クラブは一度ポポヴィッチ監督の続投を視野に入れるも、「総合的に見て、流れを変えるため」(勝矢寿延強化部長)という判断から中断期間での監督交代に踏み切った。新監督に就任したのは、イタリア国籍のマルコ・ペッツァイオリ氏。日本国内では聞き慣れない名前だが、ドイツのアンダー世代での監督歴が豊富であり、2008−09シーズンにはUEFA(欧州サッカー連盟)U−17欧州選手権で優勝を果たしている。クラブレベルでも、10年にはホッフェンハイム(ドイツ)でラルフ・ラングニック監督の元でコーチを務めた。「若手育成に長け、育成型のセレッソのカラーにも合う」「現代サッカーの主流であるドイツサッカーを学んでいる」という点が、クラブがペッツァイオリ氏を監督に招いた主な理由である。さらに、勝矢強化部長は、「彼の指揮したチームのサッカーは映像で確認した。しっかりと組織立ってスピード感のあるサッカーをしていた」とも語った。

 就任と同時に行われた6月16日からの和歌山キャンプでは、ペッツァイオリ監督は早速、戦術の浸透に着手。前線からスイッチを入れ、後ろが連動する守備の整備に時間を割いた。「全体が1本のひもでつながっているように」との言葉が印象的であり、プレスを外された時はDFラインがいったん下がりながらセットし、そこから再びプレスに行く意識付けも行っていた。和歌山から大阪・舞洲に戻っての日々の練習では、ゲーム形式において選手を固定せず、さまざまなポジションで試している。

「監督の役目は、それぞれの選手が持っている、それぞれ違った才能をどう生かすかを考えること。毎日の練習の中から選手の可能性を見いだしていきたい」(ペッツァイオリ監督)とその理由を話す。「監督は、『練習で良かった選手を使う』と話している」(扇原貴宏)。選手のモチベーションは高い。

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著者プロフィール

1980年生まれ。兵庫県出身。漫画『キャプテン翼』の影響を受け、幼少時よりサッカーを始める。中学入学と同時にJリーグが開幕。高校時代に記者を志す。関西大学社会学部を卒業後、番組制作会社勤務などを経て、2009年シーズンよりサッカー専門新聞『EL GOLAZO』のセレッソ大阪、徳島ヴォルティス担当としてサッカーライター業をスタート。2014年シーズンよりC大阪専属として、取材・執筆活動を行なっている。

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