C大阪、新監督就任で再スタート 結果出ずも新スタイルに手応えあり

小田尚史

山口「意識を高く持てばJリーグでも成長できる」

クラブでは主将としてチームを支える山口(左)。ペッツァイオリ監督の戦術でも中心を担い、Jリーグで成長を誓う 【写真:アフロスポーツ】

 戦術の中心には山口蛍がいる。激しいプレスでボールを奪った後の飛び出し。ペッツァイオリ監督が掲げるサッカーのスタイルは、まさに山口個人のプレースタイルとも重なる。W杯から帰国後、正式にチームの全体練習に合流した7月4日。報道陣の前でW杯後初めてコメントを発した山口は、「世界のトップ選手と対戦して、肌で感じる部分はあった。そういう選手に近付くために、海外に挑戦することも1つだと思うし、こっちに残って意識を高くやっていくことも1つ」と言葉を選びながら話した。

 海外でのプレーに対する希望について問われると、「環境を変えて自分を追い込むことも大事かなとは思うけど、こればっかりは何が起こるか分からない。今はセレッソでしっかりやることだけに集中している」と話すに留めた。新たな指揮官の下でのサッカーについては、「映像を見たり、周りの話を聞いたりする中では、自分にも合っていると思う。監督のやりたいことを体現して、全員攻撃、全員守備で戦いたい」と意気込みも話した。

 練習後には高橋大輔コーチと話す姿も見られ、戦術理解に努める姿が印象的だった。迎えた川崎戦では、光るプレーを随所に見せた。W杯での激闘を終えたばかりで、クラブでは主将として新監督となったチームを支える役割を担う。山口の肩にかかる負担は大きいが、「意識を高く持てばJリーグでも成長できる」と話す。

 現時点では、この気持ちで残りのシーズンを戦い抜く覚悟であろう。

課題噴出も、チームは前向き

 冒頭の川崎戦から4日後の19日。第15節の横浜F・マリノス戦は2−2に終わった。序盤からマリノスの出足の速さ、ポゼッションのうまさに主導権を握られる展開が続き、川崎戦で見せた前からのプレスや、素早い縦への攻撃は陰を潜めた。それでも、ここ2試合の選手の感触は悪くない。ペッツァイオリ監督の基本システムとなっている4−3−3のアンカーで優れたパスセンスを発揮している扇原は、「ここ2試合、勝てていないけど、感覚的には悪くない。ネガティブになる必要はない。継続していくだけ。みんなも手応えをつかみ始めていると思う」と語る。課題としては、「プレスに行く時と行かない時の判断を全員で意思統一すること」。そして「90分の中での状況に応じた戦い方の整理」だろう。

 また、「マリノス戦の後半は、前から1つずつ守備がずれて、後ろ(の守備)が厳しくなった」(平野甲斐)。前線の守備がハマらないと、しわ寄せがチーム全体に及ぶ戦い方でもあるため、「この戦術は1人がサボれば苦しくなる」(平野)。「前からプレッシャーをかけて、前で取って勝負するサッカー。ただ、後ろがワンボランチになった分、前はプレッシャーをかけやすくなったけど、そこで取り切れないと、後ろの守り方は苦しくなる」(キム・ジンヒョン)ことも確かなため、90分の中で、「苦しい時間帯は思い切って引いてカウンター」(藤本康太)も選択肢のひとつとなる。

「去年のベースのやり方なので、すぐにできると思う。前から行く新しい戦術に加えて、そこをうまくやれればいい。その辺は(山口)蛍やタカ(扇原)とも話しながらやっていきたい」と藤本は語る。「試合をやるごとに良い点、悪い点は出てくる。それを次にどう改善するかが大事。下を向かずにやっていきたい」と横浜FM戦後に新井場徹が話したように、試合ごとに噴出する課題もチームは前向きに捉えている。

 23日には、順位が近いヴァンフォーレ甲府との一戦が控えている(15節終了時でC大阪は14位、甲府は16位)。結果次第では降格圏に落ちる重要な試合だが、チームに気負いは見られない。川崎戦では勝ち点0に終わり、横浜FM戦では勝ち点1を得た。3戦目となる今節で勝ち点3を獲得し、マルコ・ペッツァイオリ新体制の真のスタートを切りたい。

2/2ページ

著者プロフィール

1980年生まれ。兵庫県出身。漫画『キャプテン翼』の影響を受け、幼少時よりサッカーを始める。中学入学と同時にJリーグが開幕。高校時代に記者を志す。関西大学社会学部を卒業後、番組制作会社勤務などを経て、2009年シーズンよりサッカー専門新聞『EL GOLAZO』のセレッソ大阪、徳島ヴォルティス担当としてサッカーライター業をスタート。2014年シーズンよりC大阪専属として、取材・執筆活動を行なっている。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント