全員で戦い、3位を勝ち取ったオランイェ 世代を問わず成長を続けた選手たち

中田徹

称えたいフラールの活躍

筆者が“今大会の驚き”として推すフラール(左)。その活躍は指揮官ファン・ハールからも称えられている 【写真:ロイター/アフロ】

 だが、個人的に“今大会の驚き”として推したいのが、ロン・フラールである。22歳のCBコンビ、デ・フライとブルーノ・マルティンス・インディだけでは心もとない中、ファン・ハール監督はこの2人の間にベテランのフラールを置くと、初戦のスペイン戦から見事なディフェンスリーダーぶりを発揮した。

 彼はAZ 、フェイエノールト時代、ビルドアップのうまいCBとして活躍。現在はアストン・ビラに所属しているが、個人的には少し高いレベルの舞台では厳しいと感じていた。近年はビルドアップの質も下がっている。つまり、ファン・ハールのフィロソフィーから外れたDFなのだ。今大会も彼がボールをつながず、大きくクリアし、ファン・ハール監督が激高する姿をみた。

 しかし、その欠点を補って余りあるほどの守備を今大会のフラールは見せた。そしてアルゼンチン戦では「私の目から見て、今日のピッチの上のベストプレイヤー」と指揮官から称えられるほどの素晴らしいプレーを披露した。

 若くて高いクオリティーを備えている選手が、ビッグトーナメントを通じて成長して行くのはよくある事。しかし、フラールはある程度の限界が見えていた29歳の選手。それがW杯で毎試合、安定した守備力を見せ、最終ラインでリーダーシップを発揮した。すべてのプレーの判断はハッキリし、チーム好調の基礎となり、間違いなくプレーの質が上がって成長したのだから驚きだ。手放しで誉め称えるしかない。

 今大会活躍した選手として、フラールをフォーカスする日本の媒体もそうはないだろう。しかし、しっかり記憶に焼き付けておきたい選手だ。

すでに決まっている後任人事

 オランダはすでに帰国し、解散した。わずか2日の休みを経て、ファン・ハールはマンチェスターへ飛び、新天地での活動を始める。ユーロ(欧州選手権)2016の指揮を執るのは、やはり名将の誉れ高いフース・ヒディンクだ。しかも驚くべきことに、その次の監督も決まっている。ファン・ハールとヒディンクの下でコーチを務めるダニー・ブリントが、2018年W杯ロシア大会でオランダ代表を率いる指揮官となるのだ。

 かつてアヤックスの監督として失敗した後、スパルタ・ロッテルダムやアヤックスでテクニカル・ディレクターを務め、実際に采配を振るうことから離れている彼が、代表チームの監督として内定したことに批判の声も聞こえてくる。ともかく4年後を見据えて、すでにオランダはスタートし始めている。

2/2ページ

著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント