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見るものの心を揺さぶる最後尾の勇者たち
GKのMOMが倍増したブラジル大会

GKの大会と言えるブラジルW杯

グループリーグ第2戦でメキシコのGKオチョア(左)が、ブラジルの攻撃をシャットアウト。スコアレスドローの立役者となった
グループリーグ第2戦でメキシコのGKオチョア(左)が、ブラジルの攻撃をシャットアウト。スコアレスドローの立役者となった【写真:ロイター/アフロ】

 2014年ワールドカップ(W杯)・ブラジル大会も、残すところ2試合。62試合が終わり、MOM(マン・オブ・ザ・マッチ)にゴールキーパー(GK)が12度選ばれた。前回大会が5度だったことを考えると、すでに倍以上で、今大会は「GKの大会」だったと言えよう。

 

 GKのMOMが倍増したことは、高温多湿の開催地が多く、カウンターからDFラインの裏に抜け出すシーンが多く生まれたことや、決勝トーナメントに入ってPK戦が4度と過去最多タイになるなど、GKが目立つ状況が多かった影響もあるだろう。いずれにせよ、あらためてGKの重要性がクローズアップされた大会となった。


 まず、GKが注目されるきっかけとなった試合は6月17日(現地時間。以下同)、グループAのブラジル対メキシコだった。互いの守護神が好セーブを連発し、スコアレスドロー。特にメキシコのGKギジェルモ・オチョアは出色の出来で、ブラジルの攻撃をシャットアウトしたことから、MOMに選出された。このニュースは驚きと賞賛を持って世界中を駆け巡った。


 メキシコは、決勝トーナメント1回戦でオランダに1−2で敗れたが、オチョアは再びMOMに選出。反応の良さと前に出る判断、タイミングは素晴らしかったが、残念ながらオランダ戦ではコーナーキックからのボールを前に出つつもミスし、失点の原因を作ったことが悔やまれる。メキシコ国内で名を馳せ、3シーズン前からはフランスで研さんを積んだ、現在28歳のオチョア。他国のクラブへの移籍は確実視されており、さらなる成長が期待される。


 また開催国のブラジル代表GKジュリオ・セーザルも、調子は良かった。2011−12シーズンまでイタリア・インテルで7シーズン過ごした実績と、34歳のベテランの味を見せた。所属するトロントFC(米国MLS)で出場機会に恵まれず、ゲーム勘のなさを不安視されたが、素晴らしい反応とパンチングでブラジルのゴールを守った。特に決勝トーナメント1回戦、PK戦でチリのシュートを2本止め、準決勝進出に貢献。ただ、準決勝のドイツ戦ではまさかの7失点を喫し、最優秀GKからは遠ざかった……。

弱冠22歳のベルギーGKクルトワの存在

弱冠22歳ながら、ベルギーの28年ぶりのベスト8進出の立役者となったクルトワ
弱冠22歳ながら、ベルギーの28年ぶりのベスト8進出の立役者となったクルトワ【写真:Action Images/アフロ】

 オチョアに並び、今大会を盛り上げたのは「死の組」(グループD)を首位で通過したコスタリカのGKケイラー・ナバスだ。国内の強豪サプリサなどを経て、11−12シーズンからはスペインのレバンテに在籍。特に、昨シーズンは正GKとして37試合に出場。レバンテをリーグ5位の失点数で10位に導いた安定感とセービングを、そのままW杯でも発揮した。


 184センチと身長はさほど高くないが、ナバスは欧州で活躍するGKらしく、ポジショニングと反応に優れている。イタリアを1−0で破り、0−0だったイングランド戦はMOMに選出。優勝経験国を2試合連続零封したことは特筆すべきだ。決勝トーナメント1回戦でもギリシャのPKを1本止めて、MOMに輝いた。さらに続く準々決勝のオランダ戦も無失点に抑え、PK戦の末に3−4で敗れたが、3度目のMOMに選出された。結局、コスタリカは一度も負けることなく、ナバスは5試合2失点でブラジルを去った。まだ27歳。近い将来、世界的GKの仲間入りをする可能性もある。


 今大会、一番の驚きと収穫は、ベルギーのGKティボ・クルトワだった。他国の正GKの多くは30歳以上、若くても20代後半という中にあって、22歳と圧倒的に若い。だがアトレティコ・マドリーで3シーズンの間、ゴールを守り続け、特に昨シーズンはチャンピオンズリーグ準優勝&リーグ優勝に寄与していた“経験”もあった。


 クルトワは、W杯でも期待を裏切らなかった。彼のスタイルは欧州の現在の基本、トレンドを踏まえている。足の幅はいつも狭く、細かく動きながら正しい位置に構えて、前に出るタイミングも秀逸。決勝トーナメント1回戦の米国戦、2−1で迎えた延長後半でも、冷静に前に出てビッグセーブを見せて、ベルギーの28年ぶりのベスト8進出の立役者となった。


 06年ドイツ大会の最優秀GKに輝いたイタリアGKジャンルイジ・ブッフォン(36歳)、10年南アフリカ大会の最優秀GKだったスペインのイケル・カシージャス(33歳)、チェコのペトル・チェフ(32歳)の3人はすでに30歳を超えている。経験がものを言うGKだが、22歳のクルトワの安定感は、彼ら3人にも比肩するほど。同年代のライバルは、スペインのGKダビド・デ・ヘア(23歳)くらいか。クルトワはあと2回、いや3回はW杯に出られることを考えると、「世界No.1」と言われる日も、そう遠くない。

斉藤健仁

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。 学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「世界最強のゴールキーパー論」(出版芸術社)、「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)など著書多数。最新刊は「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版/2017年11月刊)。

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