見るものの心を揺さぶる最後尾の勇者たち GKのMOMが倍増したブラジル大会
気になる最優秀GKの行方
ブラジルW杯の最優秀GK最有力といえるドイツのマヌエル・ノイアー。今大会でもその実力をいかんなく発揮している 【写真:Maurizio Borsari/アフロ】
193センチの長身に恵まれ、正しいポジショニングを取り、小さくジャンプをし続けて近場のシュートにも素早く反応する。下のボールの方が反応するのに時間がかかるため、常に手は下に構えているが、パワーもあるため、上のボールに反応することも難なくやってしまう。さらに、「相手にシュートを打たせない」意識が高く、DFラインとGKの間のスペースに出されたボールを的確に、足でクリア。またスローイングもキックも遠くまで飛ばすことができ、弱点は見当たらない。
ノイアーの『動』に対し、冷静さと落ち着きを武器とする『静』のGKは、フランスのウーゴ・ロリスだ。19歳でリーグ・アンデビューを果たし、08年から4シーズン、オリンピック・リヨンで活躍し、高評価を得た。主将として臨んだ今大会は、両足を左右に開く「スプリットステップ」をせず、相手がシュートを打つまであまり動かないスタイルで守り続けた。積極的に前へ出ないが、ハイボールに強く、前へ出たときにはしっかりとセーブ。ミスの少ないタイプだ。
ロリスに似たタイプのGKがオランダのヤスパー・シレッセンだ。ルイス・ファン・ハール監督は、フォーメーションを「4−3−3」ではなく「1−4−3−3」とGKの「1」を入れて書くほどGKを重要視しているという。シレッセンもボールをほとんど大きく蹴ることなく、GKからビルドアップしている姿が印象的だった。
決勝トーナメントに進出した16チームのGKは、ブラジルのセーザル(10シーズン欧州でプレーし、現在は米国MLSのトロントFC所属)以外は欧州のクラブでプレー。グループリーグ敗退した16チームを見ても、ベルギーでプレーする日本代表GK川島永嗣よろしく、13人が欧州のクラブに在籍する。あらためて欧州のレベルの高さがうかがえる。
イタリア語では「門番」を意味する「ポルティエーレ(Portiere)」というGK。今大会を通して見ると、門番のように待っているだけでなく、積極的に前に出るスタイルと高いスキルが、逆にゴールに鍵を掛けることにつながっている。また、国を代表するチームで、最後尾でゴールを死守しているという誇り、勇気が見ているものの心を揺さぶった。あのブッフォンが1990年イタリア大会で大活躍したカメルーンのGKトーマス・ヌコノのプレーに感動し、本格的にGKの道を志したように、今大会のGKたちのプレー、気迫に魅せられた子どもたちの多くがGKを目指すはずだ。
MOMに選出されたGK一覧(7月11日現在)
6月17日 ギジェルモ・オチョア(メキシコ)/ブラジル 0−0 メキシコ
6月22日 ティム・ハワード(米国)/米国 2−2 ポルトガル
6月24日 ジャンルイジ・ブッフォン(イタリア)/イタリア 0−1 ウルグアイ
6月24日 ケイラー・ナバス(コスタリカ)/コスタリカ 0−0 イングランド
6月25日 アレクサンデル・ドミンゲス(エクアドル)/エクアドル 0−0 フランス
【決勝トーナメント 1回戦】
6月28日 ジュリオ・セーザル(ブラジル)/ブラジル 1−1(PK3−2) チリ
6月29日 ギジェルモ・オチョア(メキシコ)/オランダ 2−1 メキシコ
6月29日 ケイラー・ナバス(コスタリカ)/コスタリカ 1−1(PK5−3) ギリシャ
6月30日 ライス・エンボリ(アルジェリア)/ドイツ 2−1 アルジェリア
7月1日 ティム・ハワード(米国)/ベルギー 2−1 米国
【決勝トーナメント 準々決勝】
7月5日 ケイラー・ナバス(コスタリカ)/オランダ 0−0 コスタリカ(PK4−3)
【決勝トーナメント 準決勝】
7月9日 セルヒオ・ロメロ(アルゼンチン)/オランダ 0−0 アルゼンチン(PK2−4)