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“ゲルマン魂”で受け継ぐドイツの強さ
欧州勢の南米初優勝に向けて決勝に挑む

レーブ監督のち密な作戦がはまった前半

W杯準決勝第1戦、1−7で敗れたブラジルの“悲劇”がクローズアップされているが、大勝したドイツの強さは見事としか言いようがない
W杯準決勝第1戦、1−7で敗れたブラジルの“悲劇”がクローズアップされているが、大勝したドイツの強さは見事としか言いようがない【写真:ロイター/アフロ】

 ワールドカップ(W杯)準決勝第1戦、キックオフ直前の国歌斉唱でブラジル国歌がスタジアム中に鳴り響く。その30分後にドイツの5−0というスコアが表示されることをこの時に想像できた人はいるだろうか。

 ドイツは後半にも途中出場のアンドレ・シュールレが2得点を挙げ、最後にブラジルのオスカルが一矢報いるゴールを奪ったものの、7−1という大差で歴史的な勝利を飾った。


 この試合、開催国であるブラジルの“悲劇”ばかりが注目されがちだが、ドイツの戦いぶり、特に前半は見事としか言いようがなかった。試合前に準々決勝のブラジル対コロンビアの内容に関して「欧州ならば全員退場していただろう」と語っていたことに注目を集めたヨアヒム・レーブ監督だが、戦術面でもち密な対策を準備していた。


 立ち上がりはブラジルが高い位置からドイツにプレッシャーをかけ、ネイマールがいない状況を逆に生かすような縦に鋭い仕掛けを見せる。それに対してドイツは1トップのミロスラフ・クローゼを除く9人が中盤にコンパクトなゾーンを作って受け流し、守備の要所を締めながらカウンターの好機を狙った。


「スピードのある攻撃に対して、ブラジルの守備はしばしば混乱することがあると分かっていた」とレーブ監督。特に累積警告で出場停止となったチアゴ・シウバを欠く守備陣は裏に弱さがあった。両サイドバック(SB)のポジションが高く、センターバック(CB)のダビド・ルイスとダンテは2人とも前にプレッシャーをかけるタイプで、個に強いがスペースを突いてくる動きの対応をあまり得意としていない。


 前半11分の先制点はドイツ陣内でマルセロがボールを失い、そこからサミ・ケディラがトニ・クロースとのワンツーで攻め上がったところを、自陣までマルセロが全力疾走で止めた直後のCKからだった。ゴールのニアサイドに密集した状態で、トニ・クロースが右からファーサイドに蹴り入れる。トーマス・ミュラーがニアから素早くスライドして右足で合わせた。


 これはドイツがブラジル戦に向けて仕込んでいたプレーだろう。マンツーマンで守るブラジルに対し、選手をニアに集中させてファーを空けておき、そのスペースに飛び込むという形だ。ニアに密集状態を作ることはブラジルのマークを混乱させる効果もあった。だから、ミュラーが動き出した瞬間、ブラジル側の誰も彼に付いていけなかったのだ。

06年に同じ悔しさを味わったブラジルを気遣う

W杯歴代通算最多となる16点目を挙げたクローゼのゴールは、ドイツ代表の攻撃スタイルを象徴するものだった
W杯歴代通算最多となる16点目を挙げたクローゼのゴールは、ドイツ代表の攻撃スタイルを象徴するものだった【写真:ロイター/アフロ】

 その後、しばらくブラジルが激しい攻撃を仕掛けてきたが、ドイツはその隙を逃さず、流動的なコンビネーションによる2点目につなげた。右サイドを起点にバイタルエリアでクロースがアクセントとなり、ミュラーとクローゼがタイミングよくクロスオーバーして、ブラジルDFラインの背後を突く。クロースがフェルナンジーニョのチェックをかわした瞬間、ミュラーとクローゼが同時的に動き出す。クローゼのW杯歴代最多となる16得点目となったが、ドイツの攻撃スタイルを象徴するゴールと言える。


 そこから前半29分までにドイツが挙げた3得点は、混乱を起こしたブラジルの自滅だった。後半は開き直ったように攻撃に人数をかけてくるブラジルに対し、守備が後手を踏んだ場面も何度かあったが、要所を締めながらさらに2点を追加したのはさすがだ。交代出場のシュールレが2得点を奪い7−0とすると、終盤には会場に残ったブラジル代表のサポーターもドイツの攻撃に拍手を送っていた。


 試合前はブラジル代表サポーターにかき消されたドイツの国歌が、アカペラで誇らしげに響き渡る。後にオスカルが意地のゴールを決めたが、7点差が6点差になったにすぎなかった。レーブ監督は「われわれの力を発揮できれば勝利できると思ってはいたが、このような結果は予想もできなかった」と振り返る。ブラジルの勝ち気をうまく受けながら、隙を突いて決定機を作る。そして相手DFの弱点を突いていく。それをしっかりと積み重ねた形だが、ブラジルの“崩壊”はレーブ監督も驚かされた様だ。


「2006年は開催国のドイツが準決勝で敗れ、ポルトガルとの3位決定戦に回った。今回ブラジルが置かれた状況というのは良く理解できる」。当時アシスタントコーチとして、その悔しい経験をし、さらに10年には監督として準決勝で敗れたレーブ監督はそう語り、悲しみにくれるブラジルを気遣った。

河治良幸

東京都出身。セガ『WCCF』の開発に携わり、手がけた選手カード は4500枚を超える。創刊にも関わったサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』で現在は日本代表を担当。チーム戦術やプレー分析を得意と しており、その対象は海外サッカーから日本の育成年代まで幅広い。著書に『サッカーの見方が180度変わるデータ進化論』など。

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