“ゲルマン魂”で受け継ぐドイツの強さ 欧州勢の南米初優勝に向けて決勝に挑む
何をすべきかが共有される伝統的なメンタリティー
メンタルと言っても、単に精神的な強さということではなく、チームで心を1つにして試合に臨み、さまざまな状況の中で的確なプレーを選択できること、さらに集中を切らさずに相手のチャンスを潰し、要所でチャンスをものにしていけるのだ。試合中、あまりパニックに陥らないのも、そこで何をすべきかをチームでしっかり共有しているからだろう。もちろん戦術は大きく変化しているが、伝統的なメンタリティーは継承されている。
同時的、流動的な動きで相手をかく乱する
今回は過酷な環境の中で、そうした動きを志向していても出せていないチームが多いが、ドイツは高い機動力を発揮し、相手の守備を上回る攻撃を実現しているのだ。ただ、そのドイツも90分、常にそうした動きをしているわけではない。試合の流れの中で、試合を落ち着かせる時間とテンポを上げる時間を織り交ぜている。
その主軸としてハイレベルなプレーを続けているのがMFのクロースであり、バランス感覚の高いバスティアン・シュバインシュタイガーの強力なサポートを得ながら、攻撃にリズムをもたらしているのだ。ブラジル戦は2得点を挙げたことがマン・オブ・ザ・マッチ(MOM)の獲得を大きく後押ししたが、レーブ監督が「これまで見てきた中で最高」と評価したのは、中盤からチームをオーガナイズしながら、機を逃さずにチャンスをもたらした働きに対してだろう。
決勝は守備の統率力が高まったアルゼンチンと激突
大会前に不安視されていた守備は明らかに統率力が高まっている。ハビエル・マスチェラーノが中盤の起点を封じ、ベテランDFのマルティン・デミチェリスがオランダのロビン・ファン・ペルシをほぼ完璧に封じたように、ドイツの攻撃をアルゼンチンの守備が押さえ込めると、こう着状態になるかもしれない。
密度が高い守備でアルゼンチンの良さを出させず、流れの中で持ち前の走力を生かしながら、いかに変化を入れていけるか。苦しい時間帯を堅実な守備でしっかりしのぎ、リズムの良い時間帯に効果的なフィニッシュを生み出せれば、勝機はかなり高くなる。
これまで南米開催のW杯で欧州の国が優勝したことはないが、現在のドイツはその最初のチームになるに相応しいチームであることは間違いない。