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高まるオランダ23人のチームスピリット
クルルのPKストップは必然の結果!?

熾烈な競争を強いられたオランダ正GKの座

準々決勝のコスタリカ戦は、オランダのファン・ハール采配が的中。延長後半ロスタイムに投入されたクルルが、見事PKを2本ストップし試合を制した
準々決勝のコスタリカ戦は、オランダのファン・ハール采配が的中。延長後半ロスタイムに投入されたクルルが、見事PKを2本ストップし試合を制した【写真:ロイター/アフロ】

 ワールドカップ(W杯)欧州予選の10試合で、ルイ・ファン・ハール監督はティム・クルル、マールテン・ステケレンブルフ、ケネト・フェルメール、ミヘル・フォルム、ヤスパー・シレッセンと実に5人のGKを起用した。GKはチームの砦であり、本来なら1人の選手に信頼を与え、なるべく固定したいポジションだ。しかし、代表選手の招集条件として、「所属クラブでしっかり出場機会を得ており、コンディションがフィットしている選手」と挙げた指揮官は、GKにも競争を促した。


 そのうちの1人がクルルだった。彼は2012年9月7日に行われたW杯欧州予選の初戦、対トルコ戦に抜てきされ、2−0の白星スタートに貢献したものの、安定感を欠く場面もあり、今ひとつファン・ハール監督の信頼を掴みきれなかった。


 彼にとっても、ファン・ハール監督にとっても残念だったのは、このGKはビルドアップができないことだった。


 オランダの指導者の世界では、「1−4−3−3」「1−5−3−2」というフォーメーション表記を使うが、これはGKもサッカーをする構成要員の1人と考えられており、ビルドアップへの貢献が求められているからだ。オランダのセンターバック(CB)が2人で、相手が2トップを採用したら、GKもビルドアップに参加すれば3対2の数的優位ができるではないか……という考えは、オランダではごくごく普通のことで、そこに「1−4−3−3」というフォーメーション表記の妙がある。

クルルはオランダで“ラインGK”の第一人者

オランダのファン・ハール監督は、ブラジルW杯に向けた予選で5人のGKを起用し、競争を促し続けた
オランダのファン・ハール監督は、ブラジルW杯に向けた予選で5人のGKを起用し、競争を促し続けた【写真:ロイター/アフロ】

 ファン・ハール監督のフィロソフィーに合うGK、それはアヤックスのフェルメールだった。ビルドアップの起点として、彼ほど足下の技術があるGKは他にいないだろう。しかし、昨季半ば、アヤックスのフェルメールは、ヤスパー・シレッセンにレギュラーの座を奪われ、代表チームでのヒエラルキーも失った。


 オランダはフォルムを正GKとして予選終盤を戦い、W杯出場を決めた。消化試合となった最後のトルコとのアウェーゲームで、ファン・ハール監督はシレッセンを試し、フォルムとの競争を促した。この時点でクルルのポジションは、PSVアイントホーフェンのイェルーン・ズートと第3GKの座を争っていた。


 しかし、さすがにクルルは、プレミアリーグを舞台に戦っている(ニューカッスル所属)とあって、シュートを止める力がずば抜けていた。昨季のトッテナム・ホットスパー戦では1試合14セーブを記録している。“ラインGK(ゴールラインの上で力を発揮するGKの意)”としてなら、クルルはオランダ人の中で第一人者だった。W杯というトーナメントを前に、ファン・ハール監督はあえて自分のフィロソフィーからかけ離れた選手を第3GKに入れ、PK戦のスペシャリストとしてブラジルW杯準々決勝コスタリカ戦の延長後半ロスタイムに投入したのである。

中田徹
中田徹

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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