勝ち方を忘れてしまったベテラン・マッサ=赤井邦彦の「エフワン見聞録」第30回
悲願のナンバー1待遇を手に入れたマッサだが……
オーストリアGPで2008年ブラジルGP以来のポールポジションを獲得し、ラファエラ夫人と抱擁を交わすマッサ 【LAT Photographic】
もちろんマッサはトップクラスのドライバーだが、チャンピオン・タイトルをとったドライバーと比べると常に一歩下がったところにいるようで、応援する側としてはもどかしさを感じることがある。そんな彼だからフェラーリでミハエル・シューマッハーのナンバー2として損な役割を与えられたのだが、その役割を果たした後でいつもそのことが自分の中で怒りの発端になるようで、どうも不器用な生き方しかできない人間だと思わざるを得ない。最初から「ナンバー2待遇は嫌だ」とはねつければいいのに、と思うのだが、そうはしない。自分に自信がないのかもしれない。
そんなこんなで長い間フェラーリでナンバー2に甘んじていたマッサだが、今年ウィリアムズに移籍してやっとナンバー1待遇を手に入れた。チームメイトは昨年デビューのバルテリ・ボッタス。いよいよ経験に裏付けられたベテランの力を発揮できる、とマッサは喜んだに違いない。
意外に手ごわかった新チームメイト・ボッタス
マッサは人が良すぎるんだろう。あるいは若い時に持ち得ていた激しい闘争心が鈍化したのかもしれない。どうしてもこいつにだけは負けたくないと歯を食いしばり、走路妨害すれすれの走りをしなければF1では勝てないどころか、順位はどんどん低下する。そうした状況に打ち勝つには、強烈な闘争心を持っていなくてはならない。しかし今のマッサはその気持ちを失ってしまったように思う。