160キロを生み出す大谷翔平の強さとは?=小宮山悟が解説

構成:スポーツナビ

チームトップの7勝を挙げる大谷。今季、好成績を挙げる理由を小宮山氏が解説する 【写真は共同】

 チームトップの7勝、4試合連続で160キロをマークと、投手で好成績を挙げている北海道日本ハムの大谷翔平。打者としても主に3番を任され打率2割8分7厘と、起用に応える“二刀流”2年目は、投打にスケールアップした姿を見せている。進化を続ける大谷について、日米両球界で活躍した小宮山悟氏が語った。

「合格点」だが、あくまで「合格点」

――ここまでの2年目の大谷選手を見て、どんな印象を持たれますか?

 良いんじゃないですか。まだ2年目ということで多少大目に見てもらえてる部分があると思います。本当のプロフェッショナルとしてチームの柱になるためには、もう少し改善しないといけない点が出てくると思います。しかし、われわれが望んでいるもの、彼が持っている能力を考えれば、こんなものじゃないだろう、という思いがまだありますので、今後のさらなる飛躍が今から楽しみですよ。順調にステップアップしていると感じています。

――具体的にステップアップしていると感じられる点はどこですか?

 まずは安定感。投げている姿を見ていて、昨季の不安定さをみじんも感じさせない。本人も手応えをつかんでるのではないでしょうか。それくらい自信に満ちあふれた感じでマウンドでボールを投げています。昨年1年間、“二刀流”の経験を積んだことで得た部分なんだろうと思いますね。

 彼の持つ能力から言うと、昨季の経験を踏まえながら、さらに一回りも二回りも大きくならなければいけない。ですので、「合格点」ですけど、あくまでも「合格点」。本当はもっとみんなが驚くような選手に育ってもらわないと困ります。しかし、見てる人が楽しめていると思うので、そこは良いですね。

――「安定感」が増した理由は何が考えられるのでしょうか?

 試合をこなすことによって、プロレベルのピッチャーとして「自分はこうしなければならないんだ」という感覚的なものを、経験によって徐々にではありますが、体が覚え、理解できていると思います。

 もちろんボールに関しては、1試合を通して、ここぞというポイントがあって、そこを抑えることができれば何とかなる、という展開が必ずありますから、自分がアドバンテージを持ったまま、チームにとってもプラスになるような投球ということを数多く今シーズンはできていると言えます。だからこその数字(7勝、防御率2.61)ですね。

 普通に投げて2桁勝って、よく頑張ったという感じにはなるんでしょうけど、しかし、そういうことでは許してもらえないのが大谷くんだと思います。プロのピッチャー、エースを彼がどう定義付けているか分かりませんが、一歩ずつ着実に近づいていると思いますね。

――肉体面で感じる変化はどうですか?

 見て取れるくらいたくましさが増しましたね。あまり大きくなりすぎるのも問題なんですが、非常に良いバランスで体が大きくなってきていると思います。

――打者としての体、投手としての体は違うと思いますが、実際、大谷選手の体は両方に適した形で進化しているのでしょうか?

 こればかりは二刀流に挑戦したことのある人でないと分からないので、何が正解なのか分かりません。

 ただ、現状で大谷くんがピッチャーとして週1のローテーションで投げて結果を出している。今年はピッチャーに重きを置いて取り組んでいながら、3割近くの数字をたたき出して、ある程度バッターとしてもチームに多大な貢献をしているという結果を見ると、大谷くんは今のところ非常に良い感じで取り組めていると思いますね。

ダルよりも優れた瞬発力が生み出すスピード

――今季、球速に目を見張るものがあります。小宮山さんから見て、160キロを投げる大谷選手の強さはどこにあると思いますか?

 並外れた瞬発力を有しているというところだと思いますね。速いボールを投げるメカニズムというのは、投げる方の腕の二頭筋、三頭筋の収縮バランスで肘が伸びて、その伸びる速さが速ければ速いほどボールの速さは出てきます。その動きに耐えうるだけの肩関節であったり、(肩の)可動域であったりがバランス良く鍛えられてきているからこそ、160キロが出るということだと思います。

――同じような上背で身体能力の高い投手ですと、ダルビッシュ有投手(レンジャーズ)や、高校時代からライバルと言われる藤浪晋太郎投手(阪神)がいますが。

 2人よりも高いと思いますね。

 ただ、鍛え方を誤ると痛い目を見ます。キーワードは「バランス良く」。ただ、大谷くんの場合、偏ったことのないように、すべてのパーツをうまくコーディネートしながら、少しずつレベルアップしている印象ですので、本当にうまくトレーニングして体を作り上げていると感じますね。

――大谷選手の投手としての課題を挙げるとしたら?

 真っすぐですね。少しシュート回転して中に入る場面が見られるので、そこが改善されれば、相当な球になりますね。

――ストレートよりも変化球に課題があると思っていましたが、ストレートが課題とは少し意外でした。

 変化球をマスターするにはそれ相応の時間が必要です。毎日のピッチングやキャッチボールで、いろいろなことを試しながら自分でコツをつかみ、初めてゲームで使って、その結果によってマイナーチェンジを繰り返しながら自分のボールにしていくものです。

 ただ、今シーズンのピッチングの組み立てもですが、昨年と比べると見違えるほど余裕を持って、いろいろな変化球を上手に使いながらピッチングができています。真っすぐに速さがある分、多少コントロールが甘かったり、変化が弱かったりしても大丈夫という部分があるにせよです。今後、さらに変化球のレベルアップを図れるということで、興味が尽きない。真っすぐをうまく使いながら、変化球のレベルアップを図っていくのが一番いいと思います。どういうレベルのピッチャーになるのか想像もできないですし、本当に楽しみですね。

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