グループリーグで輝いた“ヤングガンズ” 列強の中核を担う「U−23」の選手たち

川端暁彦

インパクトを残したハメス・ロドリゲス

オランダはデ・フライ(写真)らDFラインに若手が多い。積極的に若手を起用してきたため、「下」が育ってきている 【写真:ロイター/アフロ】

 しかし、この大会で一番大きなインパクトを残している「U−23」の選手と言えば、コロンビア代表の若き10番ではないだろうか。22歳のハメス・ロドリゲスは3試合で3得点2アシスト(編注:決勝トーナメント1回戦でもウルグアイ相手に2ゴールを決めて、5得点に伸ばした)。選手のプレーを数値化して採点する「カストロール・インデックス」によるランキングでは、グループリーグ終了時点で堂々の第1位に輝いてもいるが(ちなみに日本人の最上位は37位に入った本田圭佑)、そういった「数字」以上のモノを見ている側に感じさせているのではないか。

 日本人としてはあまり思い出したくないところではあるが、コロンビアとの第3戦の様相はハーフタイムに投入された(つまり決勝トーナメントに向けて温存されていた)彼が投入されたところから一変した。タメを作り、ドリブルで打開し、巧みにパスを散らし、そしてフィニッシュは冷静にして精緻(せいち)。オフ・ザ・ボールで少しの動き出しからマークを外してしまう賢さも突出したものがある。カウンターで彼を経由した攻撃が“怖さ”を増すシーンを今大会で何度見たことだろうか。

 主にトップ下としてプレーしている今大会だが、左MFに入ったときも脅威となっていた。左足から繰り出されるクロスボールの精度も非常に高い。彼が試合途中から左に入り、MFフアン・キンテーロ(彼も21歳の若手)がトップ下に入ったコートジボワールとの第2戦では、このキンテーロを生かしながら自身も生きる巧みさを発揮していた。日本戦では、ハメス・ロドリゲスのサポートがない状態で先発したキンテーロがまるで存在感を出せなかったのは示唆に富む現象だった。

 日本と同組と言えば、ギリシャ代表センターバックのコンスタンティノス・マノラスも22歳とは思えぬ沈着な守備で、堅守を前面に押し出すチームを支えた。186センチとギリシャ守備陣の中では特に大柄というわけではないのだが、エアバトラーとしての能力は傑出している。日本もまたその牙城を崩しきることはできなかった。

オランダとドイツは将来を見据えた選考

 そして“ヤングガンズ”が押し出されているチームと言えば、オランダも忘れるべきではないだろう。23人中5人が「U−23」の選手で構成されたオレンジ軍団では190センチのDFステファン・デ・フライ(22歳)がレギュラーとして奮闘。甘さが出るシーンもあったが、パワーとスキルを兼ね備えた好選手であり、決勝トーナメントでも注目だ。左サイドバックなどをこなすブルーノ・マルティンス・インディ(22歳)も出場機会を重ねており、FWには20歳のメンフィス・デパイもいる。

 ベテラン選手がチームから去り、ラファエル・ファン・デル・ファールト、ケビン・ストロートマンといったネームバリューのある選手を負傷で失ってしまったオランダだが、積極的に若手を起用してきたルイ・ファン・ハール采配の効用もあって、「下」がしっかりと育ってきている。それがチーム力に還元されている印象だ。

 同様にドイツ代表も「若い」。MFマリオ・ゲッツェ(22歳)が若手の象徴だが、控え選手に若手を集めているのが印象的だ。実績のない彼らは不満を漏らすことも少なく、チームの規律と統制を保ちやすいというのもあるのかもしれない。もちろん、前提として彼らに地力があるからこそだが、有望株に経験を積ませるという意図もあるだろう。外国人監督ではなかなかこうした将来を見据えた選考は難しい。自国人を監督にするチームゆえのメリットだ。

決勝Tでも新たなスターに期待

 もはやスペースが尽きてしまったが、このほかにもボスニア・ヘルツェコビナ代表のDFセアド・コラシナツ(21歳……には見えない)、ロシア代表MFアレクサンドル・ココリンなどのプレーは印象深い。もちろん、ベルギー代表MFエデン・アザール、同FWロメル・ルカクも今大会の若手で「目玉」と言える選手だが、グループステージでのインパクトはそう大きくなかった。決勝トーナメントでの巻き返しがあるか、注目したい。

 新たな才能が世界中にその可能性を見せ付け、夢を抱かせる。息詰まるような試合が続くであろうこれからのノックアウトステージで、そんな新たな時代の新たなスターの姿が見られることを期待している。

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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