再び起こるか『ナイジェリア旋風』 若手の活躍とケシ監督が植えつけた規律

河治良幸

90年代の勢いは弱まり、アフリカの中堅に

グループリーグ突破を決めたナイジェリア。90年代に起こした旋風を再び起こそうとしている 【写真:ロイター/アフロ】

 ワールドカップ(W杯)グループステージのF組で、南米の強豪アルゼンチンに惜しくも3−2で敗れたナイジェリアだが、もう1つの試合でイランがボスニア・ヘルツェゴビナに負けた(1−3)ことにより2位で4大会ぶりのグループリーグ突破が決定。ラウンド・オブ・16でE組1位のフランスと対戦することになった。

 1994年の米国W杯で旋風を巻き起こし、96年のアトランタ五輪で金メダル、さらに98年フランスW杯でもベスト16に進出したナイジェリアは“魔術師”と呼ばれたJ・J・オコチャやヌワンコ・カヌーら多くのスターを輩出し、タレントの宝庫として一世を風靡(ふうび)した。“王様”ペレが遠くない将来にアフリカ勢が世界を制すると予言したことも、当時の勢いを考えれば無理もないことだ。

 しかし、10代で注目された多くの選手が頭打ちのままスターダムから姿を消し、ビッグクラブに移籍した選手も、伸び悩んではプレーの場所を欧州の下位リーグや中東に移すケースが続出した。こうした傾向には怪しい代理人が入り込んでのビジネス化や国内の杜撰(ずさん)な育成システムなどが要因とも言われるが、ナイジェリアが世界はおろか、アフリカの中でもガーナやコートジボワールに追い越された感は否めない。

86〜88年組が再びチームを上昇させる

 そうした中でも北京五輪で銀メダル(奇しくも決勝ではリオネル・メッシやアンヘル・ディ・マリアを擁するアルゼンチンに敗れた)を獲得するなど、ジョン・オビ・ミケル(チェルシー/イングランド)を中心とする86〜88年生まれの選手たちは比較的順調に成長を重ねている。11年よりナイジェリア代表を率いるステファン・ケシ監督は彼らを主軸に置きながら、若手を発掘して抜擢(ばってき)した。

 13年1月のアフリカネーションズカップではコートジボワールやガーナなど優勝候補を抑えてアフリカ王者となったが、そこでオジェニ・オナジ(ラツィオ/イタリア)やケネス・オメルオ(ミドルズブラ/イングランド)といった若き才能が台頭。コンフェデレーションズカップ(コンフェデ杯)、W杯アフリカ予選を戦いながら現在のメンバーが形成された。

 彼らにとって大きな経験となったのが昨年のコンフェデ杯だ。ブラジルで行われたW杯のプレ大会において、スペインに真っ向から挑んで惨敗し、ウルグアイにも競り負けたが、個人の力だけでなくチームとして結束しなければ強豪を相手に勝ち進むことはできないと悟ったようだ。ケシ監督も優れた身体能力と技術を持つ彼らをいかにまとめ上げ、チームとして戦わせるかを重視して強化してきた。

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著者プロフィール

セガ『WCCF』の開発に携わり、手がけた選手カード は1万枚を超える。創刊にも関わったサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』で現在は日本代表を担当。チーム戦術やプレー分析を得意と しており、その対象は海外サッカーから日本の育成年代まで幅広い。「タグマ!」にてWEBマガジン『サッカーの羅針盤』を展開中。

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