再び起こるか『ナイジェリア旋風』 若手の活躍とケシ監督が植えつけた規律

河治良幸

大会ブレイク候補のムサ

今大会の注目選手となるムサ。本田圭佑の元チームメートでもあるムサは爆発的なスピードと卓越したボディーバランスの持ち主だ 【写真:ロイター/アフロ】

 キャプテンであり、攻撃の司令塔でもある27歳のミケルの存在は絶大で、31歳の守護神ビンセント・エニェアマ(リール/フランス)も度重なる好セーブで“スーパーイーグルス”を支えているが、原動力は若い力だ。

 戦前から最も注目された23歳サイドアタッカーのビクター・モーゼス(リバプール/イングランド)はイラン戦で精彩を欠き、続くボスニア・ヘルツェゴビナ戦でスタメンを外れたが、21歳のFWアーメド・ムサ(CSKAモスクワ/ロシア)、同じく21歳のMFオナジ、20歳のDFオメルオの3人は特筆に値する活躍を見せている。

 本田圭佑の元チームメートでもあるムサは爆発的なスピードと卓越したボディーバランスの持ち主だ。アルゼンチン戦ではマイケル・ババトゥンデ(ボリン・ルツク/ウクライナ)のパスから左のワイドを突き、DFパブロ・サバレタをかわしながらファーサイドのネットを揺らした。さらにエマヌエル・エメニケ(フェネルバフチェ/トルコ)とのパス交換からペナルティーエリア内に侵入すると、冷静にGKを破り2点目を決めた。

 その2点目に象徴される様に、個人の突破力だけでなく周囲と素早く絡む仕掛けは守る側にとって、かなり脅威となっている。守備にも献身的で、左ウイングからプレッシャーをかけ、相手のサイドバックが上がればしっかり付いて自由を奪う。今大会の全体を見渡してもブレイク候補の1人だろう。

大会屈指のボランチコンビのオナジとミケル

 オナジはセリエAの名門ラツィオでも主力を張っており、海外サッカーに詳しいファンにはすでに良く知られている存在だろう。この大会で目に付くのはミケルとの役割分担だ。ある程度、中央にどっしり構えてボールをさばくミケルとは対照的に、ところ狭しとピッチを駆け回ってバイタルエリアやサイドのボール局面にも顔を出す。

 機動力にあふれるスタイルでありながら、90分を通してパフォーマンスがほとんど落ちない。クイアバで行われたボスニア・ヘルツェゴビナ戦は試合開始時で気温が30度を超え、後半に入って日が落ちても29度を指していたが、オナジは終盤まで幅広く動き、鋭いスプリント力も見せていた。

 大黒柱であるミケルとの“ボランチ・コンビ”は今大会でも屈指と言ってもいいだろう。フランス戦では21歳のMFポール・ポグバ(ユベントス/イタリア)とのマッチアップが予想されるが、そこで獅子奮迅の働きを見せ、強烈な存在感を放つことができれば、さらに国際的な名を高めることになるだろう。

ロシアW杯での躍進の可能性も

 オメルオは川島永嗣の所属するベルギーのスタンダールで育てられ、そこからチェルシーに引き抜かれた超エリートであり、ミケルにも弟分としてかわいがられる存在だ。昨季は英チャンピオンシップ(2部)のミドルズブラでプレーしたが、すでにトップリーグでプレーする資格があることをここまでの3試合で示している。

 ボスニア・ヘルツェゴビナ戦では33歳のベテランDFジョセフ・ヨボ(ノーリッジ/イングランド)とセンターバックのコンビを組み、トップクラスのストライカーであるエディン・ジェコ(マンチェスター・シティ/イングランド)と激しいマッチアップを展開。ラインを統率しながら、このポジションとしてはずば抜けたスピードを駆使して2列目からの飛び出しなども封じた。

 彼らが活躍すればフランスをも苦しめるはずだが、楽しみなのはその後の成長だ。優れた能力に加えて、ケシ監督が植えつけた規律と献身性を持つ彼らが本当の意味でワールドクラスに大成していくことで、10年来のナイジェリアの“低迷”に終止符を打ち、さらに4年後のロシアW杯での躍進にもつなげていくことができるだろう。

 ナイジェリアは昨年のU−17W杯を優勝。6得点7アシストでゴールデンボールを獲得したケレシ・イヘアナチョ(マンチェスター・シティ/イングランド)ら将来を嘱望される10代の選手は多いが、若くしてブラジルW杯を経験した選手たちは彼らの良き見本にもなっていくはずだ。

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著者プロフィール

セガ『WCCF』の開発に携わり、手がけた選手カード は1万枚を超える。創刊にも関わったサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』で現在は日本代表を担当。チーム戦術やプレー分析を得意と しており、その対象は海外サッカーから日本の育成年代まで幅広い。「タグマ!」にてWEBマガジン『サッカーの羅針盤』を展開中。

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