日本代表のスクラムが強くなった理由 世界ランクは過去最高の10位に
スクラム自慢のイタリアに勝利
イタリアに初めて勝ち、国際試合10連勝で、世界ランクを過去最高の10位に上げた日本代表 【斉藤健仁】
「スクラムで勝てた」。スクラム強豪国のひとつを打倒した勝因を、エディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)は表情を崩すことなく言った。HO堀江翔太も「相手に組みたい方向に押させなかったという点で勝っていた」と胸を張った。3点差で迎えた後半37分から、スクラムで反則を誘い、うまく時間を使って試合を終わらせた。「日本代表では初めての経験、歴史になりました」と最多キャップ記録更新中のLO大野均も笑顔で振り返った。
世界的名将は、攻撃ラグビーを信条とするも、スクラムの要であるフッカー出身で「攻撃に柔軟性をもたらす」と、その重要性は重々承知。そのため2012年4月の就任後、初練習でもスクラムに取り組んだ。「世界と戦うためには(成功率)90%の(スクラムとラインアウトといった)セットピースが必要です」
ダルマゾコーチ就任時は戸惑いも
ダルマゾコーチ(中央)の指導を受け、日本代表のスクラムは成長してきた 【斉藤健仁】
個々が強い姿勢となり、少し緩めに組んで対応するニュージーランド(NZ)流とは違い、8人一体で低く固くバインドして組むフランス流のスクラムに、当初、選手たちは戸惑いを見せた。ダルマゾは、足の位置や姿勢の低さ、スクラムで当たった後もしっかり足をかいて相手と押し合うことなど細かく指導。組み合った状態で、前後、左右、上下に動き、時には回ったりするなどの練習も始めた。8人一体となって、低く、強い姿勢を保つことで、いろいろな方向から押してくる相手に柔軟に対応することが狙いだ。時にはコーチ自らがスクラムの上にも寝転がった。
なぜ、低く組むのか。スクラムではマイボールの場合は、ボールを入れる側の高さに合わせることが原則で、低く8人で組むことで、体の大きな相手も押すことができる。大きな相手が体重を乗せてプレッシャーかけてきた場合でも、8人で耐えつつ、その方向に押し返す。「組んだ瞬間はイーブンではなく、最低でも6:4くらいの状態にしたい」(PR山下裕史)
12年の欧州遠征はスクラムで完敗
スクラムを組んだまま左右に移動したり、回転する練習も 【斉藤健仁】
2013年の春シーズンもダルマゾの熱血指導は続き、点数差、場所などを考慮して、時には相手ボールを奪ったり、反則を誘ったりする「戦略的なスクラム」の重要性も説いた。昨年6月、アメリカとの一戦では、敵陣奥深くの相手ボールのスクラムを押すなど一定の成長を見せた。