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日本代表のスクラムが強くなった理由
世界ランクは過去最高の10位に

スクラム自慢のイタリアに勝利

イタリアに初めて勝ち、国際試合10連勝で、世界ランクを過去最高の10位に上げた日本代表
イタリアに初めて勝ち、国際試合10連勝で、世界ランクを過去最高の10位に上げた日本代表【斉藤健仁】

 ラグビー日本代表が、また、歴史を塗り変えた。昨年のウェールズ代表に続き、6月21日、欧州6カ国対抗で戦うイタリア代表に26対23で勝利。6戦目にして初白星で、テストマッチ10連勝を達成。さらに世界ランキングでは初めて10位に上昇した。


「スクラムで勝てた」。スクラム強豪国のひとつを打倒した勝因を、エディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)は表情を崩すことなく言った。HO堀江翔太も「相手に組みたい方向に押させなかったという点で勝っていた」と胸を張った。3点差で迎えた後半37分から、スクラムで反則を誘い、うまく時間を使って試合を終わらせた。「日本代表では初めての経験、歴史になりました」と最多キャップ記録更新中のLO大野均も笑顔で振り返った。


 世界的名将は、攻撃ラグビーを信条とするも、スクラムの要であるフッカー出身で「攻撃に柔軟性をもたらす」と、その重要性は重々承知。そのため2012年4月の就任後、初練習でもスクラムに取り組んだ。「世界と戦うためには(成功率)90%の(スクラムとラインアウトといった)セットピースが必要です」

ダルマゾコーチ就任時は戸惑いも

ダルマゾコーチ(中央)の指導を受け、日本代表のスクラムは成長してきた
ダルマゾコーチ(中央)の指導を受け、日本代表のスクラムは成長してきた【斉藤健仁】

 2012年11月の欧州遠征から、スポットコーチとして白羽の矢が立ったのが、元フランス代表のフッカー、マルク・ダルマゾ氏だった。招集した理由を「フランス代表は、体格に勝るサモア代表と対等にスクラムを組んでいる」。つまり、フランス流のスクラムを導入したというわけだ。


 個々が強い姿勢となり、少し緩めに組んで対応するニュージーランド(NZ)流とは違い、8人一体で低く固くバインドして組むフランス流のスクラムに、当初、選手たちは戸惑いを見せた。ダルマゾは、足の位置や姿勢の低さ、スクラムで当たった後もしっかり足をかいて相手と押し合うことなど細かく指導。組み合った状態で、前後、左右、上下に動き、時には回ったりするなどの練習も始めた。8人一体となって、低く、強い姿勢を保つことで、いろいろな方向から押してくる相手に柔軟に対応することが狙いだ。時にはコーチ自らがスクラムの上にも寝転がった。


 なぜ、低く組むのか。スクラムではマイボールの場合は、ボールを入れる側の高さに合わせることが原則で、低く8人で組むことで、体の大きな相手も押すことができる。大きな相手が体重を乗せてプレッシャーかけてきた場合でも、8人で耐えつつ、その方向に押し返す。「組んだ瞬間はイーブンではなく、最低でも6:4くらいの状態にしたい」(PR山下裕史)

12年の欧州遠征はスクラムで完敗

スクラムを組んだまま左右に移動したり、回転する練習も
スクラムを組んだまま左右に移動したり、回転する練習も【斉藤健仁】

 だが、すぐに実になるわけではなく、敵地でルーマニア、グルジアには連勝したが、スクラムの成功率は20%以下。遠征最後のフランスリーグ選抜の試合でも、明らかに負けていた。そのため、この遠征の一番の課題をジョーンズHCは「スクラム」と断言、FWには、翌春までにスクラムを支える背筋の筋量を3kg増やすように指示した。ダルマゾも当時、こう言っていた。「フィジカルもスキルも不可欠だが、日本代表に決定的に足りないのは、スクラムの重要性を認識して取り組む態度です。だから高い意識を持って取り組んでほしい」


 2013年の春シーズンもダルマゾの熱血指導は続き、点数差、場所などを考慮して、時には相手ボールを奪ったり、反則を誘ったりする「戦略的なスクラム」の重要性も説いた。昨年6月、アメリカとの一戦では、敵陣奥深くの相手ボールのスクラムを押すなど一定の成長を見せた。

斉藤健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。 学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「世界のサッカー愛称のひみつ」(光文社新書)、「世界最強のゴールキーパー論」(出版芸術社)、「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)など著書多数。最新刊は「ラグビー日本代表 1301日間の回顧録」(カンゼン/2016年6月刊)。

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