『ロナウド依存』が生んだチームの欠陥 ポルトガルの慢性的な決定力不足は未解決
エウゼビオはもういない
ぎりぎりグループリーグ突破に望みをつないだポルトガル。しかしエース・ロナウドは「W杯の優勝は望めない」と語る 【写真:ロイター/アフロ】
ポルトガルをグループリーグ敗退の危機から救ったのは、右サイドからロナウドが送ったクロスをヘディングで決めたもう1人のサイドアタッカー、バレラであった。真正のセンターFWがゴールを決められない。らしいと言えばとてもポルトガルらしい得点の決め方であった。
ポルトガル代表の決定力不足は誰もが指摘するようになり、すでに慢性病の域に達している。今年1月に逝去した往年の名ストライカー、エウゼビオ以降、ポルトガルには絶対的な点取り屋が生まれてこないのである。
確かに、80年代にはフェルナンド・ゴメスという2度もゴールデンブーツ賞(欧州主要リーグ中、個人最多得点を挙げた選手に贈られる賞)に輝いたFWがいたし、21世紀に入ればヌーノ・ゴメスも活躍した。彼らはいく度かポルトガル代表を救う印象的なゴールを決めたが、世界的な基準で見れば超一流のストライカーというわけにはいかない。
現在ブラジルで行われているW杯でも、ポルトガルは2試合を終えて2ゴールを決めているが、どちらもサイドアタッカーの得点である。ポルトガルにはロナウド、ナニ、そして救国の英雄となったバレラのように世界に誇れるサイドの選手がいる。
ここにエウゼビオクラスの選手がいれば毎試合ゴールラッシュと夢想するのは私だけではないだろう。しかし、ない物ねだりをしてもしかたないのである。
ロナウドの負傷がチームに影響
また、中盤の組み立てを重視するばかりに、パスをつなぐこと自体が目的になってしまいがちという見方も可能だ。
だが、現在の代表に関して言えば、問題は『ロナウド頼み』という欠陥が指摘できそうだ。ドリブルで突破し、相手守備陣の組織を崩し、精度の高いラストパスを供給し、必要なら自らも決定的なゴールを決める。これだけスーパーな選手がいるのだから、同僚たちにはどこかで甘えが生じてしまうのではないか。
そして、いま最大の問題は、そのスーパースター、ロナウドが負傷に苦しみながらプレーしているということである。そんなロナウドに依存したチームがドイツから点を奪えないのはある意味当然であり、逆によく米国から2点をもぎ取ったものである。
ロナウド「W杯の優勝は望めない」
それならいよいよロナウドをトップの位置に持ってくるのか? けがをしていてもロナウドなら何かをやってくれるのではないか。しかも、正確なクロスならナニとバレラが入れてくれそうだ。
しかし、それはベント監督が望む戦術だろうか。第1戦、第2戦を通して中盤が十分に機能しているとは言えないポルトガル代表にとって、あまりにも前がかりになることは失点のリスクを上昇させることになりかねないのではないか。不安は残る。
トゥード・オ・ナーダ。イチかバチか。
わずかな希望にすがるしかないポルトガル。米国戦後、あきらめの雰囲気も醸し出したベント監督は、ガーナを相手にどんな策を練ってくるのだろうか。ロナウドはすでに「ポルトガルは限界のある代表チーム。W杯の優勝は望めない」と認めてしまったのだが……。