栄光、挫折…ベッカムが戦ったW杯 たどり着いた「完璧なエンディング」
ファンを魅了し続けたベッカム
イングランド代表として115試合に出場したデイビッド・ベッカム 【写真:PICS UNITED/アフロ】
エンブレムにちなんだ「スリーライオンズ」ことイングランド代表で、フィールドプレーヤーとしては最多の115の国際試合出場(うち58試合でキャプテン)を誇るのは、昨年の5月、惜しまれつつもパリ・サンジェルマンでシューズを脱いだデイビッド・ベッカムだ。端正な顔立ちと、ヘアスタイルやファッションはもちろんのこと、「インチ・パーフェクト」と称された正確な右足でファンを魅了し続けた。
1998−99シーズン、所属するマンチェスター・ユナイテッドで、国内リーグとFA杯、そしてチャンピオンズリーグ(CL)の「トレブル(三冠)」を達成。さらに、プレミアリーグだけでなく、スペインのリーガ・エスパニョーラ、米国のメジャーリーグサッカー(MLS)、フランスのリーグ1と4つのリーグでタイトルを獲得した初のイングランド人選手にもなった。
W杯での一発退場は「もっとも長い時間」
98年フランス大会、決勝トーナメント1回戦のアルゼンチン戦でベッカムは「若気の至り」から、アルゼンチンMFディエゴ・シメオネ(現アトレティコ・マドリー監督)のファウルの後に、右足を上げて報復。そんな彼に審判から出されたのは、レッドカードだった。そのショックはあまりにも大きく、ピッチからロッカールームに戻ったとき、ベッカムは「最も長い時間」に感じたという。1人選手が欠けたイングランド代表は、PK戦まで持ち込んだが敗戦。ベッカムはW杯敗退の「戦犯」として扱われた。
それでも、クラブで数々のタイトル獲得に貢献したベッカムは2000年の欧州選手権(ユーロ)後からイングランド代表の主将に任命され、02年W杯の欧州予選を迎えた。イングランドは欧州予選において2試合連続で勝つことができず、一時は欧州予選敗退までささやかれた。だが、01年10月6日、オールド・トラフォードで行われたギリシャ代表戦、アディショナルタイムにベッカムが同点となるFKを決めて、イングランド代表をW杯出場に導いた。一夜にして、彼は「戦犯」から一転、「The man of men(男の中の男)」と賞賛された。