栄光、挫折…ベッカムが戦ったW杯 たどり着いた「完璧なエンディング」

斉藤健仁

因縁のアルゼンチン代表と再戦

2002年のW杯・日韓大会で因縁のアルゼンチン代表を破る 【写真:ロイター/アフロ】

 そんな中で迎えた日韓共催の02年W杯。イングランド代表は、アルゼンチン代表と同じグループとなった。「完全なるリベンジを果たす機会なんて、そんなにめったにあるわけじゃない」と言いながら、ベッカムは自らの足で、そのチャンスをつかむことになる。

 ただ、それは、一筋縄ではいかなかった。だからこそ、よりサッカーファンの耳目を集めた。ベッカムはW杯まで8週間前の、CLのデポルティボ・ラ・コルーニャ戦で、アルゼンチン人選手のタックルを受けて、右足の第二中足骨を骨折。「僕の足の骨は、どの話題よりも世間の注目を浴びた」(ベッカム)。日本でも酸素カプセルでの治療など、イングランドだけでなく世界中の話題となった。

 ベッカムはどうにか骨折から復帰するも、埼玉で行われたグループリーグの初戦のスウェーデン代表戦は1−1で引き分けてしまった。そして札幌で迎えた2試合目が、アルゼンチン代表との再戦だった。何としても勝たないといけない試合で、キャプテンマークを付けたベッカム自ら、前半44分にPKを決めて1−0で勝利した。

 4年前のW杯での「屈辱」を、再びW杯で晴らした瞬間となった。イングランド代表は、準々決勝でブラジル代表に敗れたが、02年W杯はベッカムにとって「個人的なストーリーに、信じられないほど、完璧なエンディングをもたらした」大会となった。

記録よりも記憶に残り続ける

 ちなみに、ベッカムは、イングランド代表としての初ゴールも98年W杯のグループリーグのコロンビア戦での「代名詞」であるFKであった。また3度のW杯で得点した初のイングランド代表選手にもなった。だが、W杯の結果はベスト16、ベスト8、ベスト8と自国開催の66年大会以来の優勝に導くことはできなかった。

 それでもベッカムは、W杯において、胸のすくようなリベンジを果たし、記録ではなく記憶に残る選手として世界中のサッカーファンの心に刻まれている。

書籍紹介

お気に入りの写真150枚余りとともにサッカー人生を振り返る最後の自伝。日本語版が遂に登場。「DAVID BECKHAM」 【株式会社日之出出版】

 マンチェスター・ユナイテッド、レアル・マドリー、ロサンゼルス・ギャラクシー、ACミラン、パリ・サンジェルマン、そしてイングランド代表と、数々のユニホームに身を包んで活躍し大成功をおさめたベッカムは、昨年5月、20年におよぶ選手生活に幕を下ろした。イングランド代表として115の国際試合出場のうち58試合でキャプテンを務めたベッカムは、フィールドプレーヤーとして最多出場記録を保持している。

「僕は、もう他に自伝を書こうとは思わない。その代わりに、自分自身のサッカー人生で見てきたことや、その時々に感じたことを書いておきたいと思ったんだ」

 この言葉から始まる本書は、世界中のファンに歓喜をもたらし、時に落胆させたベッカムのサッカー人生を、自身のお気に入りの写真150枚余りとともに振り返る最後の自伝である。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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