悪いのは戦術ではなく“コンディション” 育成指導者が見るスペイン初戦の仕上がり
スペインは5バックに対処できていた?
スペインがオランダに歴史的大敗を喫した要因は何なのか。スペインで指導者として活躍する坪井健太郎氏に戦術分析をお願いした 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
今回、戦術分析はスペインで指導者として活躍する坪井健太郎氏(UEコルネジャ育成コーチ)にお願いした。坪井氏は「まずはオランダが5−3−2を使ったというのが一つのポイント」とした上でこう続ける。「ゲームプランとしては中盤のエリアでボールを奪ってロビン・ファン・ペルシーとアリエン・ロッベンの2トップでカウンターを仕掛ける形です。4−2−3−1のスペインは、サイドハーフのアンドレス・イニエスタとダビド・シルバが中に入ってフエゴ・インテリオール(真ん中でのプレー)を特長としていますから、オランダは逆にそこでボールを奪うために中盤で3対3を作ってマンツーマン気味のプレッシングをかけていきました」
実際、5バックでありながらもコンパクトかつ高い位置でプレッシングを仕掛けてきたオランダを前に、スペインは思うようなパス回しができず、序盤はペースを握れず、ボールを持たされる状態が続いていた。しかし、そこは育成年代からのち密な戦術指導で戦術メモリーを蓄積させているスペインの選手たちで、坪井氏は「15〜20分あたりからオランダの戦略に気づいたスペインは『スペースの創造、侵入、利用』という戦術コンセプトを用いて前線にモビリティー(動き)と壁パスによる崩しを生み出していきました」と説明する。
ミスが重なったが「総体的には悪くなかった」
このように前半はオランダが5バックシステムで対スペインの戦略を練ってきたのに対し、スペインも問題を解決する行為たる戦術を蓄積されたメモリーから選び出し、状況を改善したわけだが、後半は「トップレベルでは起こってはいけないミスが重なってしまった」ことでオランダの一方的な展開となった。だからこそ、坪井氏は「ディテールとして悪い部分は多かったが、総体的には悪くなかった」とスペインの戦術を分析する。
ただし、コンディション面では大会前から不安視されていた以上に悪い状態であることが明らかとなった。チャンピオンズリーグ(CL)決勝がレアル・マドリーとアトレティコ・マドリーのカードとなったこと、無冠に終わったバルセロナのパフォーマンスレベルの低下によって主力の大半が良い状態で開幕を迎えることができなかった。攻守で象徴的な選手を1人ずつ挙げるとすれば、FWジエゴ・コスタとDFジェラール・ピケになるだろう。