日本に勝機! 緒戦から見えたギリシャ “堅守速攻”にほころび 高さには注意

西部謙司

攻撃時はぎこちないビルドアップ

コロンビアに0−3で敗れたギリシャ。“堅守速攻”は見られなかった 【写真:ロイター/アフロ】

 ワールドカップ(W杯)ブラジル大会のグループC第1試合、ギリシャがコロンビアとの緒戦を0−3で落としたのは、日本にとっていいニュースだ。

 ギリシャは堅い守備からのカウンターアタックを得意とする。しかし、自分たちがボールを支配して点を取るのは得意ではない。緒戦を落としたことで、次の日本戦で勝利が欲しいギリシャとしては、ある程度は攻撃に力を割くことになる。つまり、ギリシャの強みの出る戦い方ができなくなるわけだ。

 では、攻撃的にプレーするときのギリシャはどうか。

 コロンビア戦ではわずか5分で先制されたので、攻撃に出るしかなくなっていた。
 フォーメーションは4−3−3。中盤の底にいるコンスタンティノス・カツラニスは、ビルドアップのときにはセンターバックの間に入ってパスワークの中心になる。ギリシャでは最もパスワークの安定した選手だ。

 ところが、最終ラインを3人にしてキープするのはいいのだが、サイドバックがそれほど高い位置を取らない。さらにディミトリオス・サルピンティディス、ゲオルギオス・サマラスの両ウイングが中央へ移動することもない。変化しているのは最終ラインだけで、前方にパスの出しどころが少なく、DFが見えている場所へのフィードばかりなのだ。

 ビルドアップ時にフォーメーションを変化させるのは、多くのチームで取り入れられている戦法だが、そのときはサイドバックを上げてウイングが中へ入るなど、前方のポジションもローテーションさせて、プレスにかからないようにするのが定番だ。日本はそうしたビルドアップとポジション移動でマークのズレを作り出している。

 ところが、ギリシャはカツラニスが下がるだけで連係はほとんどない。ボールを支配して攻撃することに慣れていないのかもしれない。ギリシャにボールを持たれても、あまり恐くないというのが正直な印象である。上手くハメれば、高い位置でボールを奪い取ることもできる。

 日本のアルベルト・ザッケローニ監督は、すでにギリシャのビルドアップを分析ずみだろう。非常にハメやすいパス回しなので、高い位置でプレスしてのショートカウンターを狙えるはずだ。

要注意選手は、リーチのあるサマラス

日本にとって要注意人物となるのはFWのサマラス。速くはないが、独特な強さのある選手だ 【写真:Action Images/アフロ】

 攻め手は左サイドのサマラスのキープ力だった。長身でリーチがあり、体を入れられるとなかなかボールを奪えない。ここにボールを入れる攻撃が最も安定感がある。

 スピード感はないが、DFから足の届かないところへボールを置いて抜いていくプレーもできる。ウイングとしてはあまりいないタイプなので、対面のDFは少々手こずるかもしれない。ただ、速さはないので内田篤人と岡崎慎司で挟み込めばプレーは制限できる。

 右のサルピンギディスは対照的に小柄で、キレで勝負するウイング。交代出場したヨアニス・フェトファツィディスも同じタイプだった。サルピンギディスが右利き、フェトファツィディスが左利きと利き足の違いはあるが、どちらも長友佑都なら十分対応できるだろう。

 センターフォワードで先発したテオファニス・ゲカスは機動力のあるポストプレーヤーだ。予選のエースだったコンスタンティノス・ミトログルほど長身ではなく、足下の収まりのよさが持ち味だが、あまり決定力は高くない。ミトログルは強さはあるが、ゲカスほど動けない。一長一短といったところか。

 むしろ日本が警戒すべきはMFのパナギオティス・コネかもしれない。テクニックが優れているわけではないが、ダイナミックな前線への飛び出しを狙ってくる。もう1人のMFヨアニス・マニアティスも同じようなタイプだが、コネのほうが攻撃的なプレーをする。

 サイドバックは守備型で、さほど攻撃に威力はない。右のバシリオス・トロシディスはタイムリーな攻撃参加を見せるが、右足のクロスボールで終わるシンプルなプレーがほとんど。左のホセ・ホレバスは完全な左利きで右足はまったく使えない。左足を封じてしまえばいいだろう。

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著者プロフィール

1962年9月27日、東京都出身。サッカー専門誌記者を経て2002年よりフリーランス。近著は『フットボール代表 プレースタイル図鑑』(カンゼン) 『Jリーグ新戦術レポート2022』(ELGOLAZO BOOKS)。タグマにてWEBマガジン『犬の生活SUPER』を展開中

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