ブラジル人が永遠に忘れ得ぬ悲しい記憶 「マラカナンの悲劇」を乗り越えて
ブラジルが勝利にこだわるようになったわけ
1950年のW杯、ウルグアイのギジャ(中央)が決めた決勝ゴールはブラジル国民に大きな悲しみを与えた 【写真:AP/アフロ】
当時、スタンドを埋めた20万人の大観衆のみならず、全国民が大きなショックを受け、嘆き悲しんだ。しかし、この敗北を通じて、ブラジルは美しいプレーをするだけでなく勝負にもこだわることを学んだ。以後の15回のW杯で実に5回の優勝を重ね、「フットボール王国」と呼ばれるまでになった。それゆえ、ブラジルでは、「『マラカナンの悲劇』があったからこそ、ブラジルのフットボールの今日がある」という声が多い。
悲劇を乗り越えるか、奇跡の再現か
昨年のコンフェデレーションズカップ(コンフェデ杯)で、試合前に地元観衆と一体となった国歌のアカペラ&フルコーラス大合唱で闘志を燃え立たせて試合に突入。立ち上がりに先制点を奪い、その後はやや引き気味になって体力を温存しながらボールを奪うと得意のカウンターで追加点を奪う、という勝ちパターンを確立した。W杯でも、この戦い方を踏襲しようとするのは間違いない。現在のセレソン(ブラジル代表の愛称)の攻撃陣にはネイマールを除くと規格外の選手がおらず、相手に自陣深くまで引かれ、人数をかけて守られると攻めあぐむことが少なくない。勝利の方程式は、あくまでも先行、逃げ切り、ということになる。
一方、ウルグアイはコンフェデ杯準決勝(2−1)でブラジルを大いに苦しめ、大会後、ルイス・フェリペ・スコラーリ監督をして「最も困難だった試合」と言わしめた。W杯南米予選で苦戦して5位に甘んじ、ヨルダンとの大陸間プレーオフを経てやっとの思いで出場権を獲得したわけだが、だからといって「戦力が低下している」とは言い切れない。
ウルグアイは、大舞台で信じられないような闘魂(「ガーラ・チャルア」と呼ばれる。「チャルア」とは現在のウルグアイの領土に居住していた先住民族で、スペイン人植民者を相手に極めて勇敢に戦ったことで知られる)を発揮することで知られており、とりわけ南米の宿敵ブラジル、アルゼンチンとの試合では実力以上のプレーを見せて苦しめることが多い。
はたして、ブラジルは「マラカナンの悲劇」を乗り越えることができるのか。ウルグアイは、「マラカナンの奇跡」を再現できるのか。