注目の日本王者・内藤律樹が初防衛戦=6月のボクシング興行見どころ

船橋真二郎

江藤三兄弟の長男・光喜がOPBF決定戦へ挑む

昨年11月のヨドモンコン・ポーセーンチップ戦にTKO負けを喫した江藤が再起戦でOPBFフライ級王座決定戦に臨む 【Getty Images】

 6月17日には、WBA世界フライ級14位の江藤光喜(白井・具志堅)が後楽園ホールで東洋太平洋フライ級王座決定戦に臨む。江藤は昨年8月、敵地タイでWBA世界フライ級暫定王者のコンパヤック・ポープラムックに3-0の判定で勝利する殊勲を挙げた。日本では正当な理由のない暫定王座の設置を認めておらず、江藤の肩書きはあくまで“WBA1位”だが、キャリア50戦以上のベテランからダウンを奪った末の勝利が色あせることはない。11月末、江藤は再びタイに飛んで12ラウンドTKO負け。その試合で負った左眼窩底骨折も癒え、約半年ぶりの再起戦がタイトルマッチとなる。対戦相手は直前になって代わり、東洋太平洋2位のアーデン・ディアーレ(フィリピン)と王座を争うことになった。ディアーレは昨年、来日して現日本フライ級14位の堀陽太(横浜光)に力強いボクシングで7ラウンドTKO勝ちし、力を示した。江藤三兄弟の長男は東洋太平洋王座を足がかりに世界戦線に再浮上できるか。正念場のリングになる。

 2月に井上尚弥(大橋)が返上した日本ライトフライ級王座決定戦に臨み、新王者となった木村悠(帝拳)が6月7日、後楽園ホールで初防衛戦を迎える。挑戦者の知念勇樹(琉球)は昨年4月、田口良一(ワタナベ)との王座決定戦に敗れて以来、2度目の挑戦となる。元アマチュア全日本王者で安定感のある技巧を誇る木村と一発強打を備える長身の知念。意外性のある知念が序盤から木村のペースを乱すことができれば、展開は白熱する。6月23日には、4月に日本フェザー級王者に返り咲いた細野悟(大橋)の初防衛戦が後楽園ホールで行なわれる。当初は元日本王者・福原力也(ワタナベ)とのベテラン同士のサバイバルマッチが予定されていたが、福原が負傷。関豪介(角海老宝石)に白羽の矢が立った。実績は細野が大きく上回るが、関は旺盛な手数とスタミナを武器に無敗をキープするサウスポーの突貫ファイター。4度目の世界挑戦に向け、背水のリングが続く細野にとってもやりづらい相手だ。また、この日は世界初挑戦を視野に入れる東洋太平洋ミニマム級王者の原隆二(大橋)、元高校4冠で10戦全勝(8KO)のホープ松本亮(大橋)が登場する。

亀海がロバート・ゲレロとの再起戦に抜てき

 6月も日本人ボクサーが海外で勝負の大一番に臨む。6月21日(日本時間22日)、東洋太平洋ウェルター級王者の亀海喜寛(帝拳)がロサンゼルス近郊のカーソンでロバート・ゲレロ(アメリカ)と拳をまじえるのだ。4階級制覇のゲレロは昨年5月、5階級制覇のスター選手フロイド・メイウェザー(アメリカ)とのビッグマッチに敗れて以来のリング。ビッグネームの再起戦の相手に大抜てきされた亀海は5月15日、帝拳ジムで行なわれた村田諒太(三迫)の公開練習の際、報道陣の囲み取材に応じ、「ゲレロにいい内容で勝てば、その先の展開は誰もが想像できると思う。自分もそれを求めてアメリカに行く」と意気込みを語った。

 日本のボクサーの主戦場であるミニマム級からミドル級の13階級の中で、ウェルター級は唯一、日本が世界王者を輩出していない高い壁。現在の王者の顔ぶれを見てもWBA・WBCはメイウェザー、WBOはパッキャオ、IBFは曲者ポール・マリナッジ(アメリカ)に圧勝し、一躍脚光を浴びる26歳のショーン・ポーター(アメリカ)と、挑戦を実現することも至難に思えてくる。だが、ゲレロに勝てば“カメガイ”の名が売れるのは確か。亀海にはちょうど1年前の6月、場所も同じカーソンで世界ランカーのジョアン・ペレス(ベネズエラ)に判定で初黒星を喫し、アメリカ進出を頓挫させた苦い過去がある。再び巡ってきたチャンスはラストチャンスとも言える。格上のサウスポー相手に不利予想は否めないが「勝つことしか頭にないし、自分がいちばん楽しみ」という亀海は世界に続く扉を開くことができるか。

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著者プロフィール

1973年生まれ。東京都出身。『ボクシング・ビート』(フィットネススポーツ)、『ボクシング・マガジン』(ベースボールマガジン社=2022年7月休刊)など、ボクシングを取材し、執筆。文藝春秋Number第13回スポーツノンフィクション新人賞最終候補(2005年)。東日本ボクシング協会が選出する月間賞の選考委員も務める。

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