【有馬記念】レガレイラ64年ぶり偉業、ドウデュース引退後の主役へ「体現できるように育んでいきたい」
シャフリヤールとのハナ差の大接戦を制したレガレイラ(左)、3歳牝馬による有馬記念制覇は64年ぶりの偉業 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】
レガレイラは今回の勝利でJRA通算8戦3勝、重賞は2023年ホープフルステークスに続く2勝目。騎乗した戸崎騎手は2014年ジェンティルドンナ以来となる有馬記念2勝目、木村哲也調教師は22年イクイノックス以来の同レース2勝目となった。
ハナ差の2着に惜敗したのはクリスチャン・デムーロ騎手騎乗の10番人気シャフリヤール(牡6=栗東・藤原英厩舎)、さらに1馬身半差の3着には横山典弘騎手騎乗の2番人気ダノンデサイル(牡3=栗東・安田厩舎)が入線。1番人気に支持されていたクリストフ・ルメール騎手騎乗のアーバンシック(牡3=美浦・武井厩舎)は6着に敗れた。
「どっちが勝ったかは全く分からなかった」
戸崎騎手も「全く分からなかった」とコースから引き揚げてくる際にはまだ勝利を確信できていなかった 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】
「もう必死でした。気持ちでは負けないでおこうと。でもどっちが勝ったかは全く分からなかったですね」と、ゴール前の大接戦をこう振り返ったのは戸崎騎手だ。
レガレイラは昨年のホープフルステークス勝ち馬、一方のシャフリヤールは2021年の日本ダービー馬。どちらも一度は世代の頂点に立ちながらも、その後は思うように勝利を挙げられず苦しんでいた。その2頭が年の瀬の大一番で、積み重なった悔しさを晴らすような力走。そんな3歳牝馬と6歳牡馬の世代を超えたマッチレースに胸が熱くなる思いがしたのは筆者だけではないはずだ。
ハナ差勝利に感じたレガレイラの力
直線は年上のダービー馬シャフリヤールとの大接戦、ゴールまでデッドヒートを展開した 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】
ダノンデサイルはそのまま先頭に立ち、最内枠を利して逃げの態勢。外から無理に競りかけてくる馬はなく、こうなると道中は名人・横山典弘騎手の独り舞台だ。巧みにペースを落としつつ、前半1000mは62秒9で先行有利。その流れの中、戸崎騎手とレガレイラは馬群の中をスルスルと好位4番手まで押し上げていた。
「レースプランはある程度前につけたいなと思っていました。もともとスタートに課題があるのかなと感じていましたので、そこだけはすごく気を付けていました。ただ、スタートは少し出負けしたかなと思うんですけど、スムーズにポジションを上げられましたし、その後はリズム良く走ってくれたのではないかなと思います」
鞍上が振り返った通り、遅い流れに焦れて行きたがる馬もいた中、テン乗りでもレガレイラとの折り合いはバッチリ。また、2周目3コーナー手前から1ハロン11秒台前半へとダノンデサイルが一気にラップを上げたが、その急激なペースアップにもスムーズについていき、4コーナーから直線入り口にかけてはむしろ引っ張り切りの手応えを見せていた。
「十分に手応えがありましたし、道もスムーズに開いてくれましたので後は伸びるだけだなと思っていましたが……追い込んできた馬(シャフリヤール)と接戦になって、あそこでハナ差出てくれたのはレガレイラの力だなと思いましたね」
10年前のジェンティルドンナとは違う嬉しさ
レガレイラにはジェンティルドンナと共通する「勝負強さ」を感じたと語った戸崎騎手(右) 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】
また、ジョッキー自身に関して振り返ると、「当時は勢い、気持ちだけで乗っていた」。だが、10年の月日を経た中で「今は自分の中で騎乗しての感覚というものがすごく良くなっている。この歳になってまだまだ気づいたことがある」のだという。その成果が12月22日時点で132勝、GI・2勝を含む重賞7勝の好成績につながっており、2度目の有馬制覇も10年前とは違い「噛みしめるような嬉しさ」と心境を明かした。
「来年はJRAを引っ張っていく1頭に」
2025年のJRAをけん引する主役として突き進む 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】
「すごいことだと思います。この64年の間、多くのホースマンの努力の上で歴史が紡がれてきたわけですが、こうしてファンの皆さんにドラマを提供できたのであれば、レガレイラの管理者の一人としては非常に誇らしく思いますね」
朝日杯フューチュリティステークスも含めて2歳の混合GIを牝馬として史上初めて制覇してから1年。今度は史上2頭目の3歳牝馬による有馬記念Vという偉業を達成した。実績だけならすでに歴史的名牝の域に達していると言ってもいい。だが、レガレイラの終着点はもちろんここではなく、今からが本当のスタートになる。
「可能性しかないですね」と、将来性を問われた戸崎騎手はそう即答。木村調教師は「ドウデュースが引退しますので、来年はJRAを引っ張っていく1頭になろうかと思います。それを体現できるようにしっかりとサポートして、育んでいきたい」と決意を新たにした。
今年の有馬記念もドラマに彩られていた
ドウデュースの出走取消は残念だったが、今年もドラマにあふれた有馬記念だった 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】
ドウデュースの最後の雄姿が見られなかったのは本当に残念ではあった。だが、絶対的主役が不在の中で見た第69回有馬記念は決して物足りないものではなく、古馬の底力、3歳馬の可能性、64年ぶりの偉業――今年もあらゆるドラマに彩られていたグランプリだった。(取材・文:森永淳洋)
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