頑張りすぎないランニングのススメ 元日本代表が語るゆるRUN

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4月、RUNフェスを開催した元陸上日本代表の西田さん。「ゆる〜く」のテーマに込められた思いを語ってくれました 【スポーツナビDo】

「ランニングとウォーキングは生涯スポーツ」と語る西田隆維さん。4月19日に開催した「日本一ゆる〜いランニングイベント“RUNフェス”〜春のRUN祭り〜」では実行委員長を務めた。そうはいっても自身は、駒澤大学時代に箱根駅伝4年連続出場、区間新記録(4年時、9区)をマーク、その後、世界選手権の男子マラソンで9位に入るなどした元日本代表選手。そんな西田さんが“ゆるい”をテーマに伝えたかった、ランニングの楽しみ方とは。(取材日:4月25日)

ターゲットは、ランニング大会初心者

――RUNフェスを終えての感想は?

 まずはホッとしました。自分でやりたいなということがイメージどおりにはできました。怖い部分もありました。順位タイムをつけないことで、やりきれるのかなと。大会が終わって、参加者の方から「参加して良かったです」という声を聞けて、フェイスブックにも喜びの言葉が書かれていて、そこで安心感が初めて出てきました。

――「西田ランニングくらぶ」を主宰されていますが、こういったイベントは今回が初めての開催ですか?

 そうですね、この規模のイベントは初めてでしたね。今回のターゲットの人たちってランニングの大会に出たことがない人たちなので、エントリー方法も分からない。だから新たにエントリーフォームをつくって、SNSとかでどんどん告知をしていって、少しずつエントリーが増えていきました。どれだけエントリーの敷居を低くできるかは考えました。

テーマは「家族」 みんなで楽しむイベントに

親子ランで元気良く飛び出す子供たち 【スポーツナビDo】

――今大会の種目は5つでしたが、どういうイメージで決めたんですか?

 親子の部は必ず入れたかったんです。やっぱり家族というのをテーマにしたくて。ゲストランナーとしていろいろな大会を見させてもらったときに、ひとりで来ている人が多いなと思っていたんです。走れるお父さんが日曜日はランニング大会に行ってしまうと、家族は置いていかれてしまう。それなら、親子で一緒に行けるようなイベントができたらと思いました。

 でも親子で来たときに、一緒に来た家族がどう楽しめばいいか。そこは今回、吉澤(吉澤永一さん=明大競争部競歩コーチ、2003年世界選手権競歩日本代表)が「ちびっこかけっこ塾」をやってくれました。ちょっとプラスになったんじゃないかと思っています。こういうものがあると、(家族を)引っ張ってきやすいですし。

会場ではかけっこ教室も開催。ちびっこたちは一生懸命に吉澤“先生”の動きをまねしていました 【スポーツナビDo】

「ゆるキャラ最速選手権」は、“ゆるい”という言葉から思い付きで(笑)。だたエントリーしてくれるゆるキャラを集めるのが本当に大変でした(笑)。最初の「ズンちゃん」以降、なかなか決まらなくて。

RUNフェスを盛り上げたゆるキャラたち 【スポーツナビDo】

数字はどれくらい大事? ランニング大会で感じていた疑問

――そもそも、ゆるくRUNフェスをやろうと思ったきっかけは?

 ランニング大会でタイムとか順位を求めている一般の人って、どれだけいるのかなって思うんです。トップの人が表彰されて、サブ4、サブ3(4時間、3時間以内で走ること)の人がいて、そこで認められている何かはあるのかもしれない。

 でも、出場しているランナーの中で、そこまで深く気にしている人って何人くらいいるんだろうと。そういう(タイムや順位がない)大会をやってみたら、どれくらいの人が喜んでくれるのかな、人数が集まるのかなと。それで去年の秋くらいから大会をやろうと思いはじめて、会社も立ち上げたんです。

――西田さんご自身は、世界陸上にも出場し、箱根駅伝でもエースとして走っています。“ゆるい”という世界とは無縁だったのでは?

 そうですね、僕がもしジュニアや高校生を指導するとしたら、やはりちゃんとした……ちゃんとしたというか“指導”になると思うんです。でも今は、指導ではなくて、一般の人にランニングを楽しんでもらいたいと思っています。

 速い人ばかりが入るランニングクラブというのもいいかもしれない。でも僕はランニングやウォーキングは生涯スポーツだと思っているので、走ってタバコをやめられて健康になったとか、フルマラソンを完走できて褒められたとか、そういうことを目指すのが僕らのクラブの位置付けなんです。

 長距離にしろ、何にしろ、休みとかペースを落とすことって、どうしてもすごく不安に感じるんです。それは僕らもやってきて思ったことでもあるんですが、でもそこの不安感って要らないこと。抜くことをうまくやればもっと楽しめるし、ずっとずっと長く続けられるかもしれないし。健康にもつながります。その手綱を緩めるのが僕らの仕事かなと思っています。

 そういった意味でランニングの大会も、詳しいタイムや順位がある大会がたくさんある中で、「真逆の方向でやってみよう」と。で、参加してくれた人たちが共感してくれたらうれしいなって思って。それで、走るってこういうのでいいんだよっていうのを伝えたかったんです。

がむしゃら練習での失敗 「良い状態での継続が大切」

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――現役でやっていた頃、そういった“ゆるさのススメ”のような考えはありましたか。

 現役のころから……ありましたね(笑)。僕の場合は、抜きどころがうまくて上がれた人間だったと思うんです。むしろがむしゃらにやった時は失敗しました。僕は大学2年生くらいまでは練習で言われたことしかやっていなかったんです。でも大学3年くらいから本気で役者を目指すようになって、そこから世界で戦うことを目指したんです。それは世界で戦うようになれば有名になって、芸能界に行けると。

――本気で陸上以外の道でやりたいことができて、そこから?

 世界一になったら夢に近づけるんじゃないかって。それじゃあどうしたら良いのかって、真剣に興味を持って考えたんです。そのときに、1コ1コの練習はもちろんちゃんとやりますが、バランスも考えて自分の中で解釈をしながら練習をするようになったんです。こっちの練習は“腹七分”くらいやって、こっちは“腹五分”くらいやってと。……あれ?ちょっと多いですが(笑)。そうしたらいつの間にか肩の力が抜けて、休息もちゃんととれて、自然とタイムも伸びました。

 練習って良い状態でどれだけ継続できるかが大切だと思うんです。1回1回を全力でやってしまうと、疲労が積もっていってしまって、大会本番になると体が重くなって走れない。
 手を抜くとかじゃなくて、ポイントを押さえてしっかりとやることはやって、自分の体と対話できるようにすることが大事だと思います。でも自分の体と対話ができる人ってなかなかいないから、指導する側に立った今は、こっちがさじ加減をしてあげる。

 さじ加減が大事と言っても、がむしゃらにやってしまうと思うんです。一般の人にはもっと分からないだろうし。週に3回くらいしかトレーニングができないから、1回1回をすごく頑張らないとダメだと思ってしまって。そのモチベーションは大切かもしれないですが、表情を見て苦しそうだったら(ペースを)落としてあげるようにしています。そうするとみんなが続けていける。その中でゆるさって大切だなと思いました。

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著者プロフィール

習慣的にスポーツをしている人やスポーツを始めようと思っている20代後半から40代前半のビジネスパーソンをメインターゲットに、スポーツを“気軽に、楽しく、続ける”ためのきっかけづくりとなる、魅力的なコンテンツを提供していきます。

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