マラソン界で相次ぐ薬物違反に新傾向 主催者から報酬の全額返還要求も
組織的なドーピングの疑いも
10年のロンドンマラソンでは、優勝のショブホワ(中央)、2位のアビトワ(左)がともに薬物違反で失格に。2人は同じマネジメント会社に所属している 【Getty Images】
同じマネジメント会社の選手には、13年の横浜国際女子マラソン優勝のアルビナ・マヨロワ(ロシア)、13年、14年と大阪国際女子マラソンで連覇したタチアナ・ガメラシュミルコ(ウクライナ)など日本のマラソン常連選手も多い。長野マラソンには毎年のように選手を送り込んでおり、日本のマラソンをお得意様としている節がある。
選手の思いを踏みにじる卑劣な行為
10年のロンドンマラソンは、アイスランドの火山噴火の影響で多くの飛行機が欠航になり、マーラさんはマネジャーを務めていた夫と、合宿先の米国・アルバカーキからポルトガルに渡り、そこからタクシー、レンタカー、セスナなどを乗り継ぎ、ほうほうの体でロンドンに到着した。そういった選手たちのレースに対する思いを踏みにじる今回の卑怯な行為に、マーラさんも怒りを感じているに違いない。彼女をはじめ、被害を受けた選手たちの心中は察するに余りある。
レースを守るのは主催者の役目
しかも、出場料、賞金(日本のレースでは、海外のようにその存在が公にはされていないレースもある)、旅費などエリート選手にかかる費用は、スポンサーや同じレースを走る一般ランナーの参加費から出ているもの。つまり、一流ランナーだけの問題ではないのだ。
今回のショブホワのドーピング事件を受け、マラソン界では「ほかのマラソンレースもWMMの規約に沿うべきだ」という意見も出ている。違反が発覚した場合は、過去に主催者が支払った賞金や旅費など、全額返還の要求できるように契約するべきだし、過去に違反した選手やそういった選手を多く出している代理人の選手を出場させない、という決まりがあってもいい。日本の陸上界は、ドーピングによる違反者が非常に少ないことで知られている。クリーンなエリート選手、目標に向かって走る一般ランナーにとって大切なレースを「ドーパー(薬物使用者)」から守るのは主催者の役目だ。