代表候補合宿に5人を送り込んだ広島勢 ラストアピールでサプライズ選出なるか?
塩谷司に感じる「勢い」
現在、広島で脚光を浴びているのが塩谷。攻撃力とポジションにとらわれない柔軟性、そして勢いが魅力だ 【写真:アフロ】
塩谷の魅力を「代表の構成」という部分でみれば、ポジションにとらわれない柔軟性も浮き彫りになる。もともと大学時代はボランチを務め、水戸ホーリーホック在籍時代は4バックのセンター、広島ではサイドバック(SB)の役割も担うストッパーやボランチ的な素養を必要とするリベロもこなしてきた。繊細にサッカーを突き詰めて考える知性も有しているから、広島の特殊な戦術の理解も早かった。SBとCB、緊急時にはアンカーとしても使える柔らかさも、彼の中には見いだせる。
デメリットはもちろん、年代別代表すら経験していない国際経験の少なさだ。2年間、広島でACLを戦い、ホフレ・ゲロン(エクアドル)やフレデリック・カヌーテ(マリ)のようなヨーロッパでも活躍したタレントとも刃を交えたが、それで十分でないことは、自明。それでも塩谷選出の可能性を捨てきれないのは、勢いをつかんだ選手だけが持つ特別な何かを、彼の全身から感じるからだ。抽象的かつ論理的根拠にも乏しい言い方ではあるが、時にそういう説明不能の「何か」が物事を動かすことはある。
1990年大会のサルバトーレ・スキラッチ(イタリア)が無名の存在から一気にスターダムにのし上がった事例から考えても、「勢い」という非論理的な存在は非常に重要だ。ザッケローニ監督が勝負師として、そこをどう考えているか。塩谷の選出は、そこが全てだ。
大舞台に強い石原直樹
大舞台に強い石原直樹(右)。彼も「日本を代表する」に値する選手だ 【写真:アフロスポーツ】
29歳の彼も塩谷同様、年代別代表の経験はない。ただACLでは非常に強く、国際舞台でも臆さない気持ちの強さも彼の魅力。1トップでもMFでもできるマルチ性や攻守にわたる運動量などは、岡崎慎司(マインツ)を彷彿とさせる。石原は日本代表候補合宿でも追加招集だったわけで「一番下の立場だから」と代表については達観しているが、もし彼が選ばれたなら、これ以上のサプライズはあるまい。
運命の5月12日、広島はACLでウェスタンシドニーと戦うために、オーストラリアへと赴く。そこに吉報が届くのか、それとも……。その全ては、アルベルト・ザッケローニが敢行した「なぜ」が多い合宿と、そこで彼が見たものにかかっている。