マインツ岡崎慎司を成功へと導いた要因 ドイツで最も輝く日本人FWへの変化
ゴール量産の秘密は「ウナギ」!?
今季13得点目となるゴールをドルトムントの地で決めた岡崎(左) 【写真:アフロ】
岡崎慎司は、自らのゴールでマインツをヨーロッパのカップ戦出場へと導こうとしている。ついに、その日本代表ストライカーのゴールの秘訣が解き明かされた。
岡崎は、非常にスペシャルな“成功のレシピ”を持っている。マインツの郊外にあるレストランに、まさにそのレシピはある。「ウナギを食べると、得点できるんです」と、岡崎はゴールの秘密を明かす。しかもゴールを奪う時には、1点で止まらず2点決めることもある。マインツのオフィスでは、よくこんな冗談が飛び交う。
「まだここにいたのか、何をしているんだ!? 早くウナギを食べに行くんだ!」
この冬の原稿(1月7日掲載、「サムライたちのブンデスリーガ前半戦」)で、ブンデスリーガにいる日本人選手の中で、岡崎をベストの存在に挙げた。先週土曜に行われた第31節ドルトムント戦のピッチに足を踏み入れる前にも、岡崎はすでに11ゴールを決めていた。かつて、もう一人の日本人選手が輝きを放っていた、そのピッチに入る前に。
ドルトムントファンが目にした違う「シンジ」の2ゴール
試合前の岡崎は、香川が残した記録まで、あと2ゴールに迫っていた。近いようで遠い記録。だが、岡崎は一気にその距離を縮めた。90分のうちに2ゴールを挙げて、香川の記録に追いついたのだ。ドルトムントのファンは、かつてはサムライが挙げるゴールを喜んだものだが、この日は違った。ゴールを挙げたのは、2シーズン前までとは違う「シンジ」だったのだ。
ゴールは2つとも、相手の“アシスト”もあってのものだった。1点目はDFマッツ・フメルスの脚に当って方向が変わっており、2点目はMFヌリ・シャヒンのGKへのバックパスを抜け目なくかっさらったものだった。それでも2ゴールの重みに変わりはなかったが、残念ながらマインツが勝利を収めるには十分でなかった。
試合後、「2点は取れたけれど、チームが負けてしまって残念です」と日本代表FWは語った。「今季13得点目で、シンジが記録したブンデスリーガでの日本人選手のシーズン最多得点記録に並べたことは、うれしい驚きでした。今は、残りの試合でゴールを決めるよう頑張りたい気持ちです。そうすることでチームが勝利をつかみ、僕は自分自身の記録をつくれることを願っています」
岡崎の能力を見抜いていたトゥヘル監督
アシストできるから重要な存在となっているのではない。特筆すべきは、チームメイトのためにスペースを作り出す動きだ。「ゴールをアシストすることを除いて、シンジは何でもできるんだ」。マインツを率いる指揮官は、チームのスター選手の強みをよく心得ている。
トゥヘル監督は、シュツットガルトにいる頃から岡崎のストロングポイントを見抜いていた。清水エスパルスからやって来たアタッカーは、ウイングの位置からそのスピードで嵐を巻き起こすために起用され、仲間のためにチャンスを創出していた。だが、それは岡崎の能力を見誤ったものだった。
トゥヘル監督はシーズン開幕前から岡崎をFWのポジションに据えた。これがまさに成功を呼び込んだ。「ゴールに近い位置に立つほど、得点も近くなるんです」と、岡崎は笑みを浮かべながら語った。彼は自分のポジションのみならず、マインツ自体にも快適さを感じている。すべてがうまくいっている、と彼は語る。