マインツ岡崎慎司を成功へと導いた要因 ドイツで最も輝く日本人FWへの変化
ゴールのみならず、多くの経済効果も生み出す
トゥヘル監督(左)が見抜いた岡崎の才能。岡崎はゴールだけでなく、チームに多くのものをもたらした 【写真:なかしまだいすけ/アフロ】
さらには街を盛り上げてくれている。ファンショップにある商品には、日本語のラベルが貼られている。クラブはすでに、マインツのユニホームを売るのに協力してくれるスポーツショップを探し始めている。日本語サイトに日本語でつづるフェイスブックのアカウント、それにツイッターのアカウントもある。日本語バージョンはマインツにとって重要なチャンネルになっていて、クラブはスタジアムへのツアーを企画する旅行会社ともコラボしている。さらにはスタジアムのガイドをできるよう、女性に日本語を学ばせている最中だ。
取材に対して、クラブ関係者は「練習を見に来るファンの数は、30%の増加をみせています」と明かした。岡崎の獲得はピッチ上のみならず、ファンベースの強化という商業面での成功をもたらしているのだ。
奥寺康彦の通算ゴール数に並ぶ日も近い
メディアが集まる場所でも、変化は感じ取れることだろう。職員は、すでに日本語の勉強を始めている。取材の申し込みの3分の1はアジアからのもので、その傾向はさらに強まっている。
岡崎はブンデスリーガ史上最高の日本人選手へと続く、正しい道の上にいる。奥寺康彦が1977年から1986年までケルンとブレーメンで記録したブンデスリーガ1部での通算26ゴールまで、あと3得点に迫っている。「多くのゴールを決めることができれば、ストライカーとして厚い信頼を寄せられることになります。その記録は、僕にとって夢ですね」。岡崎は、『スポーツ・ビルト』誌にそう語っている。
家族や友人との時間が最高の休息に
そうではない、という声が聞こえてくる。岡崎は、マインツで家族とともに快適さを感じている。ドイツ語も学んでおり、まだドイツ語でインタビューするほどの自信はないが、すでに耳にするほぼすべてを理解している。
練習の後にイベント事が多いこのチームにも、よく溶け込んでいる。それに、マインツのU−11チームでは、高校時代の友人である山下喬氏がコーチをしている。2人とも若き父親として、家族ぐるみの付き合いをしている。家庭こそが岡崎にとって心身の休息の場所であり、彼の力の源なのだ。ピッチ内外で、環境は整っている。
スタジアムマガジンでこの28歳の青年は、もしサッカー選手になっていなかったら、幼稚園の先生になりたかったとかつての夢を語っていた。家では子供とかくれんぼをするし、怪獣ごっこもする。そしてひとたびピッチに立てば、岡崎はゴールを量産するモンスターへと変身する。
岡崎の活躍は、監督にとっての成功でもある。このアタッカーは「トゥヘル監督は、僕にたくさんプレッシャーをかけてきます。それはまったくもって正しいことです。常に全力を尽くしているという印象を残していなければならないのですから」と『スポーツ・ビルト』に話している。指揮官はお気に入りのストライカーに多くを求める。そして、岡崎はチャレンジを必要としている。批判さえも、彼をさらに成長するための糧となる。力をもたらすウナギのように、批判さえもパワーに変えていく。
(翻訳:杉山孝)