“怪物”野杁正明が目指す道「65kgを黄金の階級にしたい」

中村拓己

「65kgはもっとKOが多くていい」

昨年9月には久保優太を破ってKrush−67kg級のベルトを獲得した野杁。5月のKrush参戦はそれ以来となる 【t.SAKUMA】

――そして野杁選手は5月11日「Krush.41」への参戦が決まりました。Krushでは67kgでベルトを巻いた野杁選手ですが、この試合から65kgで戦うことになりますね。

 67kgでも出来ると言えば出来るのですが、2月にスーパーライト級(63.5kg)まで落としたので、ちょっと筋肉量が減ってしまいました。それでいきなり67kgで試合するのは厳しいところがあります。それに今は65kgでもGLORYという世界を目指せる舞台があるので、65kgに照準を合わせてやっていこうと思いました。

――参戦発表の記者会見では「(Krushの)65kgはパッとしない」とバッサリと切り捨てていました。あの言葉は事前に考えていたのですか?

 いえ、あれは咄嗟に出ました。初代王座決定トーナメントの1回戦を見ても、いまいちパッとしなかったし…。僕は65kgってもっとKOが多くていいと思うんですよ。勝ってなんぼの世界だから勝ちにこだわるのは当然ですが、ずるずる判定までいっちゃうのは違うだろって。見ているお客さんはダウンや倒す試合を見たいわけだから、それが少ないのはどうなの?と思いますね。

一般のファンにも“野杁正明”を知らしめたい

「65kgはもっとKOが多くていい」と豪語する野杁。今回の転向で「65kgを黄金の階級にしたい」と力強い決意を語った 【t.SAKUMA】

――例えば魔裟斗さんが現役だった時代は多くの選手が70kgで試合をしていて、65kgが適正の選手も無理に増量していた部分もあると思います。ただし日本人選手の体格を考えると65kgの方が選手層が厚いかもしれません。

 僕もそう思っているし、日本で一番盛り上がる階級は65kgだと思います。K−1で63kgがスタートした時、すごく盛り上がりましたけど、世界的に見ても日本人選手が活躍する可能性があって、面白くなるのは65kgでしょう。

――なるほど。そんな65kgという階級を自分が引っ張っていきたいですか?

 僕が65kgを黄金の階級にしたいと思っています。70kg=魔裟斗さんと言われていたように、65kg=野杁正明だと言われるようにしたい。65kgでもこれだけ盛り上げて倒せる選手がいるんだぞ、ということをたくさんの人たちに知ってもらいたいです。キックボクシングを好きな人であれば僕のことを知っているかもしれませんが、一般の人たちはそうじゃない。やっぱり今でも一般的に知名度があるのは魔裟斗さんくらいじゃないですか。HIROYA選手も魔裟斗2世と言われたことで知名度があると思うし。僕はそうじゃなくて一人の人間として、一人のファイターとして“野杁正明”という存在を知らしめたいです。

――65kgという階級であればそれが出来る、と。

 はい。それが出来て、さらに世界を狙えるのがこの階級だと思います。どれだけ日本のベルトを持っていても世界で通用しなければ意味がないと思うし、ファイターとして世界のベルトを狙っていきたいです。僕は日本に留まるつもりはありません。

Krush王者HIROYAには差を見せつけて勝つ

――KrushではHIROYA選手が初代−65kg王者になりました。野杁選手はHIROYA選手がチャンピオンになった試合をリングサイドで観戦していましたが、どんな感想を持ちましたか?

 僕の目から見ても強くなっているなと思いましたね。一時はスランプだったと思うんですけど、HIROYA選手本人も言っているようにトレーナーがノッパデッソーン(※)さんになってから変わったなと思います。
※元ラジャダムナンスタジアム認定ウェルター級王者で日本ではトレーナーとして活躍。元K−1MAX日本王者・城戸康裕らを育てた。昨年からHIROYAを指導している。

――野杁選手は過去にHIROYA選手と3度対戦して3勝しています。HIROYA選手との対戦は意識していますか?

 正直、僕からすると今更やっても……という気持ちですが、立場的にHIROYA選手がチャンピオンなんで、僕が偉そうなことは言えないですよね。試合が決まれば全力で戦うだけです。

――過去3度はいずれも判定勝利でした。もし4度目の対戦が実現したらKOで完全決着をつけたいですか?

 そうですね。前回(GLORYの日本トーナメント1回戦)対戦した時はHIROYA選手がローブローで減点されたから、僕が勝ったと言われているところもあるんで、次は判定ならフルマーク、倒せるなら倒す。HIROYA選手は打たれ強いのでKOは難しいかもしれませんが、ちゃんと差を見せつけて勝ちます。

――今後もKrushルールとムエタイルールの両方で世界のトップを目指していく予定ですか?

 いい話があれば会長と相談してムエタイルールの試合にも挑戦したいです。ただ今はKrushで試合が決まっているので、Krushの−65kgでベルトを獲ることが目標です。5月の65kg初戦でしっかり勝って、8月の名古屋でタイトルマッチを組んでもらってベルトを獲る。そして11月の代々木大会で外国人選手と防衛戦というのが僕にとってのベスト、最高の流れだと思うのでぜひ実現させたいです。
■野杁正明/Masaaki Noiri
 1993年5月11日、愛知県生まれ。血液型B型。175センチ、65キロ。2009年K−1甲子園で優勝し、翌年3月にプロデビュー。Krushを中心に活躍し、昨年はGLORYの日本トーナメント王者として世界トーナメントに出場、準優勝を果たす。初挑戦となったムエタイルールではWBCムエタイ日本スーパーライト級王座を獲得し、第2代Krush−67kg級王座にも就いた。今年3月、Krush−67kg級のベルトを返上し、65kgで試合をすることを発表した。

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著者プロフィール

福岡県久留米市出身。プロレスファンから格闘技ファンを経て2003年に格闘技WEBマガジンの編集部入りし、2012年からフリーライターに。スポーツナビではその年の青木真也vs.エディ・アルバレスから執筆。格闘技を中心に活動し、専門誌の執筆、技術本の制作、テレビ解説も務める。

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