リバプール24年ぶりの優勝へ一歩前進 プレミア創設以来最もオープンな三つ巴

寺沢薫

“中立派”の心をつかむリバプールの攻撃的スタイル

熱狂的なリバプールファンはもちろん、“中立”なサッカーファンの多くもリバプールの24年ぶりリーグ制覇を望んでいる 【Getty Images】

 しかし、リバプールがシティを破ったことで、その風向きも変わりつつある。シティ戦翌日、シアラーは同じ『ザ・サン』で「現時点でアドバンテージはリバプールにある。私が感銘を受けたのは、彼らが王者のように試合を決定づけたこと。シティに追いつかれ、勝利のチャンスは失われたかに思えたが、王者は決して諦めないものだ」と意見を翻した。プレッシャーの問題に対しては、ロジャーズ監督が試合後、「今日のパフォーマンスの質の高さを見ればわかるはず。我々は重圧に耐えられているのだ」と高らかに宣言している。

 そして何より、イングランドではいわゆる“中立”のサッカーファンの多くが、リバプールの優勝を望んでいる。『ガーディアン』のアンケートでは、読者の57%がリバプール優勝を支持し、シティの31%を上回っている。現解説者のマイケル・オーウェンは、古巣リバプールの魅力的な攻撃が“中立派”の心をつかんでいると考える。

「マンチェスター・Uのファンですらそう思っていると言ったら大げさかもしれないが、今季のリバプールは多くのファンの“セカンドチーム(地元クラブの次に好きなチーム)”になったと思う。攻撃的なプレースタイルで、世界中の敬意を勝ち取ったのだ。歴史や過去の栄光によるものではない。彼らが今やっていることによってだ。再び刺激的なフットボールが見られて、みんな興奮しているんだ。私はシティが最高のチームだと今でも思っているが、今1チーム選べと言われたらリバプールがタイトルを掲げていると思う。みんなプレッシャーについて話すが、私はそれが問題だと思っていない。彼らが今いる場所は“まぐれ”じゃないし、ジェラード、スアレス、スターリッジのようなビッグプレーヤーたちは重圧に慣れている。重圧は試合前にくるもの。プレーすればそれは消えるんだ」

ラスト4試合に残された大一番で一気に形勢逆転も

 残りゲームは4試合。もし全勝できれば、他チームの結果に関係なく勝つのはリバプールだ。しかし、1試合でもポイントを落とせば、2試合消化が少ないシティに追い抜かれる可能性も十分にある。さらに、4月27日には次なる大一番も待っている。“要塞”アンフィールドにチェルシーを迎える一戦だ。ここで負ければ、チェルシーが首位を奪還する可能性が高い。92年のプレミアリーグ創設以来、「最もオープンなタイトルレース」と言われる三つ巴の争いは、もう少し続くことになる。

 その中で、いくらロジャーズ監督が「優勝」という言葉を使うのを嫌ったとしても、最も優勝を渇望しているのはリバプールだ。そのことは、シティ戦後に涙をこらえ、チームメートを集めて熱いスピーチをしたジェラードの姿が物語っている。24年の空白を埋め、リバプールにすべてを捧げてきたキャプテンがトロフィーを掲げる姿を、多くのフットボール・ファンが待っている。

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著者プロフィール

1984年、東京都生まれ。『ワールドサッカーグラフィック』編集部を経て、株式会社フットメディア(http://www.footmedia.jp/)在籍時にはプレミアリーグなど海外サッカー中継を中心としたテレビ番組制作に携わりながら、ライター、編集者、翻訳者として活動。ライターとしては『Number』『フットボリスタ』『ワールドサッカーキング』などに寄稿する

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