恩師が明かす巨人・菅野智之のすごみ 誰もが認めるエースへ、転機の2年目

ベースボール・タイムズ

菅野のみに与えられた特別なマウンド

開幕戦のマウンドに立った菅野は5回、ゴメスを打ち取り、ガッツポーズを見せた 【写真は共同】

 2014年シーズンの第1球を投げる前、菅野智之は東京ドームのマウンドで、独特の雰囲気をかみ締めていた。それは今季の巨人で、彼のみに与えられた特権だった。

「今シーズン、東京ドームのまっさらなマウンドに上がるのは、僕が最初です。1年間よろしくお願いします、と考えていました」

 3月28日、今季の開幕投手を任されたのは、昨季までのプロ10年間で通算108勝を積み上げてきた内海哲也ではなく、入団2年目の菅野だった。昨季は1年間先発ローテーションを守り、13勝6敗で新人特別賞を獲得。楽天との日本シリーズ第6戦では田中将大(現ヤンキース)と投げ合い、チームを勝利に導いた。今季のオープン戦では安定した投球を披露し(5試合で1勝1敗・防御率2.37)、自身の手で大役をつかみ取った。

 開幕戦は144分の1だが、144試合の始まりでもある。その試合で阪神打線に対し7回4失点(自責点は0)で勝ち投手になった菅野について、原辰徳監督はこう労っている。
「この緊張感のなか、貴重な時間を体験したと思う。次につなげないといけない。内容はともかく、7回まで投げられたことは良かった」

 指揮官が語るように、この日の投球内容は決して満足のいくものではなかった。立ち上がりの感触が良かったあまり、「飛ばしすぎた」ことで3回には味方のエラーと犠打の後、3本の二塁打と四球で4点を奪われる。だが、以降はランナーを許しながらも無失点に抑え、味方打線にも助けられて勝利を手にすることができた。

阪神・ゴメスとの対戦で見えた優れた思考力

 菅野自身、そしてチームにとって大きかったのが、5回2死三塁で迎えた4番のマウロ・ゴメスとの対戦だった。前の打席でレフトに2点タイムリー二塁打を打たれている相手に対し、内角へのシュートでショートゴロに打ち取った。
「その前の打席でタイムリーを打たれているので、明日、明後日の試合のためにもゴメスに打たせてはいけないと思いました。インサイドのボールで抑えられたので、明日以降もインサイドのボールを意識すると思います。1戦目に投げるピッチャーとして、重要な役割だと思います」

 3連戦の頭に登板する先発投手は、あとの2試合も考えて投げるべきだ。そのように、自身の置かれた状況で何をすべきか思考する力こそ、菅野のすごみである。東海大学時代に指導した横井人輝監督が、そんな話をしていたことがある。

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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