恩師が明かす巨人・菅野智之のすごみ 誰もが認めるエースへ、転機の2年目
横井監督が指摘する菅野のターニングポイント
東海大学時代の恩師、横井監督が「ターニングポイント」と語ったキューバ戦。2本の本塁打を浴びたが、3イニング目はしっかり3者凡退に仕留めた 【写真は共同】
しかし、9回は強力打線を3者凡退で仕留める。試合後の会見でキューバのエドゥアルド・マルティン・サウラ監督が、「彼はものすごい才能を持っている。ただ、才能というのは熟するタイミングがある。もう少し時間がかかるだろうが、きっと彼はものすごい大物になると思う」と絶賛していたことをよく覚えている。
この一戦が、菅野にとってターニングポイントになったと横井監督は言うのだ。
「詰まってバットが折れたのに、ライトにホームランを打たれた屈辱を味わったのが良かったと思う。抑えて、通用するボールがあることを確認できたのも良かった。菅野というピッチャーは、良いことだけで成長してきた子ではない。とにかく試練を与えられて成長している子だから、あいつの価値があるんです。結果的に見ると何連勝もしているし、かなりの数字を残しているけど、そのポイントになっているのは負け試合。負けるたびに成長し、課題を克服してきました」
東海大相模高校時代から注目を集めていた菅野は、大学1年秋から先発投手として活躍する。2年秋に首都大学リーグ戦のMVPに輝くと、周囲は一層熱い視線を注ぐようになった。横井監督は当初、心配な眼差しを向けていたという。だが、杞憂(きゆう)だった。
「騒がれるようになって、果たしてこの子はどうなっていくのかと思っていましたけど、逆に彼を人間的に成長させました。後輩、周りへの気配りがすごくできるようになった。マウンドに上がると闘志をむき出しにするような姿は、入学当初はなかったんです。でも、徐々にそういうのが出るようになった。かつ、人への気配りもできる。こっちがびっくりするくらいの選手になりました」
さらなる高みを目指して
「いつもより気合いが入るのは確かです。でも、特別な意識はありませんよ」
4月4日、中日戦で今季2戦目のマウンドに上がった菅野は、8回までに130球を投げて被安打4、無失点の好投でチームを勝利に導いた。セットアッパーの山口鉄也がインフルエンザで離脱中のなか、「最低7回以上は投げたい」という言葉通りの仕事ぶりで、相手に付け入るスキを与えなかった。
まるで開幕戦の後、自身で話していた言葉を実行するかのようだった。
「(周囲から)求められているのはもっと高いと思います。良かったと言って満足するのではダメ。今日のピッチングでは、自分を開幕投手に選んでいただいたスタッフ、選手も納得してくれないと思います」
菅野が目指しているのは、誰もが認めるエースの座だ。主戦級と投げ合うハードルを乗り越えることで、自身にも箔(はく)が付いていく。あとに振り返ったとき、2年目の今季は、菅野の野球人生のターニングポイントになっているかもしれない。
(中島大輔/ベースボール・タイムズ)